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MRSA感染によりBlalock-Taussigシャント近位吻合部が離開し,巨大仮生動脈瘤を形成した 1 男児例
東京慈恵会医科大学小児科
山岡 正慶,安藤 達也,斎藤 亮太,高木 健,藤原 優子,飯島 正紀,浦島 崇,衛藤 義勝,中澤 誠

【症例】9 カ月男児:完全大血管転位(3),straddling mitral valve.【病歴・経過】生後 8 日BAS施行.生後35日左BTシャント.生後 5 カ月心房中隔欠損拡大.生後 6 カ月に右BTシャントおよび主肺動脈の結紮を行ったが,結紮が不十分であったため肺動脈圧が高く,21日後,再度結紮した.ドレーンは術後 5 日に抜去.中心静脈カテーテルも抜去.創部の問題もなかった.術後 8 日までABPC/SBTを使用.術後18日には発熱なく白血球9,700/γl,CRP 0.09mg/dlと感染徴候はなかった.術後20日,39°C台の発熱.白血球22,700/γl,CRP 4.19mg/dlと上昇,血液培養よりMRSAが同定された.vancomycinを投与したが,解熱が得られず,菌血症も続くため,発症 8 日,linezolid(以下LZD)に変更した.血液培養は陰性となり,炎症所見も順調に低下した.発症23日,LZD投与継続中にもかかわらず発熱および白血球上昇,CRP上昇が認められた.同時にSpO2のベースラインが 5~10%下降し,SpO2の不安定な上昇および下降を繰り返した後,発症25日にSpO2が40~50%台に落ち込んだ.造影CTを施行した結果,巨大な仮性動脈瘤が右BTシャント腕頭動脈側にみられ,右BTシャント血流は途絶していた.カテーテル検査のうえ,緊急でGlenn手術および右BTシャントのtake downを施行した.人工血管の半周が縫合破綻していた.【考察】BTシャントの感染は,感受性のある抗生剤を十分投与していてもしばしば難治でシャントの閉塞や吻合部離開に帰結することがある.内科的治療に限界があれば,外科的治療が望ましいが,実際にシャント閉塞や吻合離解が起こるまでシャントが感染源との確証は得がたく,take downに踏み切る決断が難しい.特に本症例のように 2 本シャントがある場合,どちらに感染しているかは閉塞などのeventがなければ判別が困難である.その他文献考察も含め報告する.

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