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QT dispersionを用いた同種血液幹細胞移植後の心イベントの予測
信州大学医学部小児医学講座
元木 倫子,清水 隆,伊藤 直子,赤澤 陽平,小池 健一

【背景】血液疾患の幹細胞移植では,心不全は重篤な合併症であるが予測困難である.成人ではQT時間のばらつきを示すQT dispersion(QTD)は心不全や致死性不整脈の予測因子として使用されている.【目的】小児急性白血病に対する幹細胞移植後の心イベント(心死亡,心不全,不整脈)について予測因子を検討すること.【対象】2005年 7 月~2007年 6 月に同種血液幹細胞移植を施行した12例(1~12歳,平均6.8歳).男:女 = 4:8.ALL 6 例,AML 6 例.4 例は再発,2 例は非寛解.全例前処置にシクロフォスファミドを使用し,全身照射を施行.【方法】移植前処置前に12誘導心電図,心エコーを施行.QT時間の解析には微分法を用い,QTD,corrected QT dispersion(QTcD)とQT(QTc)の標準偏差(QTSD,QTcSD)を算出した.心エコーではLVDd,LVEF,LVFS,E/AとTei indexを計測した.これらの値について,移植後に心イベントを認めた群(HF+)と認めなかった群(HF-)で比較検討した.アントラサイクリン(ADR)累積投与量についても検討した.【結果】心イベントを認めたのは 5 例で,心室性不整脈 1 例,心不全 4 例.ADR投与量はHF+群で有意に高く(294.5 vs 148.7mg/m2,p = 0.0007),移植前のQTD(46.0 vs 27.4ms,p = 0.012),QTcD(57.2 vs 37.1ms,p = 0.013),QTSD(13.6 vs 8.8,p = 0 .014),QTcSD(17.0 vs 12.3,p = 0.021)についてもHF+群で有意に高かった.他の値は有意差を認めなかった.【結論】移植前のQT dispersionの増大は,移植後の心イベントのリスクが高い.

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