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右心室内超巨大血栓を来した難治性ネフローゼ症候群の 1 例
鹿児島大学病院小児科
上野 健太郎,櫨木 大祐,江口 太助,野村 裕一,河野 嘉文

【症例】難治性ネフローゼ症候群の男児.3 歳時に発症後,ステロイド・免疫抑制剤で長期に加療を行っており,寛解再燃を繰り返していた.11歳時,上気道炎を契機に再燃し入院した.ステロイドパルス療法,シクロスポリンで加療を行ったが難治性であり,症状の改善増悪を繰り返していた.入院後 6 カ月に,真菌性肺炎,細菌性肺炎に罹患した後,浮腫の増強,低蛋白血症,Fib高値(500~687mg/dl),AT3低値(56~70%)と過凝固の状態が続いていた.入院後 8 カ月に,収縮期駆出性雑音が聴取されるようになり,心エコー検査を施行し右室内に巨大な腫瘤を認めた.3D心エコーで腫瘤は右室中隔側乳頭筋から肺動脈弁に向かって隆起しており20×15×45mm大であった.巨大血栓は一部肺動脈弁に嵌頓し,周囲のわずかな隙間から肺血流が保たれている状態だった.開胸摘出術を行い,病理組織診は血栓で摘出巨大血栓の乳頭筋側に炎症性細胞の浸潤が認められた.【考案】本児は菌血症を契機に三尖弁に血栓が形成され,著しい過凝固と高脂質血症が関与して巨大な血栓が形成されたものと考えられた.小児ネフローゼ症候群で静脈血栓症の割合は一般的に0.3~3.5%と報告されているが,心室内巨大血栓の報告は非常に少ない.アルブミン値が 2g/dl以下,Fib > 600mg/dl,AT3 < 70%では抗凝固療法を推奨する意見もあり,これらの合併症に留意しつつ,定期的な心血管系の検査も必要と考えられた.また,本児の血栓の右室内の伸展状況等の空間的認識にはリアルタイム3D心エコーが有用だった.

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