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成人期に原発性副甲状腺機能亢進症を発症した無脾症の 1 例
土浦協同病院小児科
島田 衣里子,渡部 誠一,細川 奨,石井 卓

【はじめに】低酸素症が持続する成人先天性心疾患はさまざまな合併症が出現するが内分泌学的異常は多くない.今回われわれは,原発性副甲状腺機能亢進症(以下pHPT)と診断し副甲状腺腫摘出術を要した無脾症の 1 例を経験したので報告する.【症例】無脾症・右室性単心室・総肺静還流異常・肺動脈狭窄の29歳男性.21歳時に心室機能低下・重度の肺動脈狭窄のためFontan手術適応なしと判断された.多血・チアノーゼ性腎症・痛風のため定期的にフォロー中,徐々に高Ca血症を認め,29歳時に副甲状腺機能亢進症を疑われた.補正血清Ca 9.5mg/dl,血清P 3.7mg/dlと正常範囲であったが,ALP 437IU/l,骨性ALP 46.2U/l,intact PTH 190pg/mlと高値で,頸部造影CTで甲状腺右葉下極に1.2cm大のmassを認めた.チアノーゼ性腎症による蛋白尿はあったがCCR 93ml/分と腎機能障害はなく二次性副甲状腺機能亢進は否定的,また,下垂体機能や膵臓ホルモンの異常はなく,腹部造影CT・脳下垂体MRIでは無脾であるほかに明らかな異常はなかったことからMEN合併も否定された.以上よりpHPTと診断,DEXAにて骨密度0.667g/cm2(同世代の63.7%)と低下していたため手術適応と判断し副甲状腺腫摘出術を施行,病理組織でも腺腫と確認された.【考察】pHPTの好発年齢は50~60歳代に最も多く,女性に多い.骨病変や尿路結石などを契機に診断される場合もあるが近年では無症候性が増加している.その病因には癌遺伝子・癌抑制遺伝子の関与が指摘されており,最近では潜在的なVitD欠乏が関与しているという説も見受けられる.本症例のように無脾症やチアノーゼ性心疾患にpHPTを合併したという報告は検索した限りではこれまでになく,若年発症である点からも極めて稀有な症例と考えられた.

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