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神経性食思不振症の心病変
高知大学医学部小児思春期医学教室
玉城 渉,高杉 尚志,矢野 哲也,臼井 大介,倉繁 款子,堂野 純孝,藤枝 幹也,脇口 宏

【はじめに】神経性食思不振症(anorexia nervosa:AN)は,低栄養や脱水に伴ってさまざまな合併症を呈することが知られている.循環器系の合併症としては,徐脈,低血圧,心機能低下,心嚢液貯留,不整脈などが挙げられる.今回,2005年 4 月から2007年 3 月までに当科にANの診断で入院した 4 症例について,診療録,心電図(含ホルター心電図),心エコーのデータを用いて,入院後早期における心機能の検討を行った.【症例 1】11歳女児,入院時体重26.7kg(BMI 11.4),心拍数46回/分,血圧96/50mmHg,心エコー所見:LVDd 39.9mm(92% of N),EF 71%,MR(+),心電図:不完全右脚ブロック.【症例 2】15歳女児,入院時体重30.4kg(BMI 12.7),心拍数54回/分,血圧88/54mmHg,心エコー所見:LVDd 39.2mm(89% of N),EF 69.8%,MR(‐),心電図:不完全右脚ブロック・右軸偏位.【症例 3】15歳女児,入院時体重25.8kg(BMI 10.5),心拍数48回/分,血圧82/52mmHg,心エコー所見:LVDd 26.8mm(60% of N),EF 68.5%,MR(+),心電図:異常所見なし.【症例 4】14歳女児,入院時体重23.8kg(BMI 10.3),心拍数48回/分,血圧96/54mmHg,心エコー所見:LVDd 35.9mm(83% of N),EF 59.1%,MR(‐),心電図:右軸偏位.【結果】全症例で徐脈,低血圧が認められた.左室拡張径の縮小が 1 例で認められたが,EFは前例でほぼ正常であった.僧帽弁逸脱・逆流が 2 例,心嚢液貯留が 2 例で認められた.心電図では右軸偏位が 2 例,不完全右脚ブロックが 2 例認められた.QT延長は全例で認められなかった.ホルター心電図での心拍変動形解析では,HFの日内リズムの消失が 1 例,日中のLF/HFの低下が 2 例で認められた.【まとめ】ANにおける循環器合併症は,臨床的に問題にならない程度のものが多いとされる.しかし,QT延長症候群による死亡例も報告されており,入院時のスクリーニング検査として,心機能一般の検査は必須であると考えられる.

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