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当院で経験した左冠動脈閉塞症の 4 例
榊原記念病院小児循環器科
木村 正人,朴 仁三,嘉川 忠博,西山 光則,村上 保夫

【目的】当院で経験した左冠動脈閉塞症の 4 例について臨床像と治療を検討した.【対象および結果】対象は2003~2007年に当院に入院した 4 例,入院時年齢は10カ月~13歳(男女比 1:1).乳児期発症の 3 例〔5 カ月(症例A,B),11カ月(症例C)〕とも心雑音が契機になり循環器科へ紹介され僧帽弁閉鎖不全(MR)を指摘されていた.1 例は13歳時に失神で発症した(症例D).乳児期発症のうち症例A,Bは診断確定まで 4 カ月,5 年を要し,症例A,B,Cは当院受診時の心エコーで中等度以上のMRと僧帽弁前乳頭筋(APM)のエコー輝度亢進を認めた.心電図は症例AでV4~V6に異常Q波,V2~V6のT波陰転を認め,症例Bは 2 歳時にV1~V4でST低下を認めていたが,症例Cは正常であった.確定診断は症例A,B,Cとも心臓カテーテル検査を必要とした.症例Dは失神の精査のために施行したトレッドミル負荷試験においてST低下があり冠動脈疾患が疑われ,心臓カテーテル検査にて左冠動脈閉鎖症の診断となった.心エコーでは軽度のMRおよびAPMの輝度亢進を認めた.治療に関して,症例Cはβ-blockerとACE Iの投与でMRは軽度になり左室収縮能も正常となった.症例Aは重度MRと左室収縮能低下のためβ-blockerとACE Iに加え僧帽弁置換術(10カ月時)を施行,症例B,Dに対しては冠動脈バイパス術を施行した.【結語】当院で経験した 4 例では発症年齢により臨床経過が異なり,治療の選択はさまざまであった.心エコーで左冠動脈の起始異常は描出できず,全例でMRとAPMのエコー輝度亢進があり本疾患を疑う契機となるのではないかと考えられた.心電図で虚血所見を呈する症例もあったが正常なものもあった.確定診断には心臓カテーテル検査が必要であり,本疾患を疑った場合には,積極的に心臓カテーテル検査を行うことが必要であると考えられた.

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