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出生前診断し生後早期に外科治療を行った胎児心臓腫瘍の 2 例
兵庫県立こども病院循環器科1),てい小児科クリニック2),兵庫県立こども病院心臓血管外科3)
齋木 宏文1),鄭 輝男1,2),城戸 佐知子1),田中 敏克1),寺野 和宏1),藤田 秀樹1),大嶋 義博3),吉田 昌弘3),島津 親志3)

【背景】先天性心臓腫瘍の生命予後は血行動態に問題のある場合,必ずしも良好でないことが判明してきた.われわれは 2 例の巨大な先天性心臓腫瘍を胎児から観察し,早期に外科的加療を行った症例を経験した.【症例 1】在胎28週,頻拍のため紹介.心拍数230bpm,心嚢液を認めジギタリス経母体投与開始.以後安定し37週3.0kgで出生,NICU入院.径30mmの辺縁平滑,内部エコー不均一な腫瘍を右房内に認めたが血行動態に問題なかった.心拍数90bpmと徐脈,腫瘍拡大傾向を認めたが観察.日齢18,PSVT多発し管理できず当科転科.頻拍時循環不全,SVC狭窄,三尖弁狭窄,心嚢液増加から緊急摘出術の適応と判断した.34×40mmの腫瘍がほぼ右房を占拠し半周以上が心房筋と癒着,心房壁とともに亜全摘し,術後PSVTは消失した.病理はhemangioendothelioma(中間悪性)で心外病変を認めなかった.【症例 2】在胎34週で紹介.不整脈の既往なし.30×40mm程度,均等なエコー輝度で表面平滑だが左室を上方より,右室流出路を左側より圧迫し両心室は変形,心嚢液貯留も認めた.41週2.6kgで出生.心筋内から頭側へ幅広く進展した径 4×5cmの腫瘍を認め,心壁運動低下,心拍数80bpmの徐脈,HANP 712pg/ml,BNP 3,510pg/mlと高値,哺乳不良,末梢冷感を認めた.心筋シンチで左室自由壁の血流/代謝の解離を認め,日齢 7,心膜開窓および生検を行った.冠動脈が拡張期に虚脱する所見を認めたが肉眼的に腫瘍と正常心筋の鑑別ができず腫瘍の摘出は困難,生検でも腫瘍の表層は正常心筋に覆われていた.病理組織は横紋筋腫であった.術直後より心壁運動,哺乳,循環は改善,HANP 92pg/ml,BNP 84pg/mlに低下した.【結論】胎児から血行動態への影響が懸念される症例は腫瘍の組織型によらず外界への適応を生後に多角的に判断する必要があり,外科治療によって予後を改善する可能性もある.

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