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心房中隔欠損における欠損孔径の自然歴
兵庫県立こども病院循環器科
田中 敏克,齋木 宏文,藤田 秀樹,寺野 和宏,城戸 佐知子

【背景】Amplatzer septal occluderによるASD閉鎖術の普及に伴い,家族への十分な説明や,経食道エコーによる精査・治療を行う時期決定などの重要性が高まってきた.それらの点において,欠損孔径の自然歴を知ることは重要と考えるが,その報告は少ない.【目的】ASDにおける欠損孔径の自然歴を明らかにすること.【対象】2000~2007年の 7 年間に外来で 4 年間以上フォローし,最終受診時の欠損孔径が 3mm以上であったASD患児53例(男23例・女30例,最終受診時年齢 4~20歳,中央値 9 歳).【方法】初診時(初診が2000年以前の症例は2000年を初診とした)から最終受診時までの,各受診ごとの患者年齢と経胸壁心エコーによる欠損孔の最大径を後方視的に調べ,1 年当たりの平均増加率(mm/年)を求めた.観察期間中に 3mm以上増加した症例については年齢別の増加率を調べた.最終受診時の径が 8mm以上であったA群と 8mm未満であったB群について,初診時の径および年齢・最終受診時年齢・観察期間・径の増加率について比較検討した.さらに増加率と最終受診時の径の相関関係について調べた.【結果】欠損孔径は初診時6.0±2.6mmから最終受診時7.9±3.8mmに有意に増加していた.増加率は-0.68mmから+2.4mm,中央値+0.3mm/年であった.3mm以上増加した症例は19例(35.8%)あり,年齢別にみると 2~4 歳で増加率が大きい傾向がみられた.A群(22例)とB群(31例)の比較では,A群において初診時の径と増加率が有意に大きかった.増加率と最終受診時の径は有意な相関があり(p < 0.01,r = 0.75),増加率0.5mm以上,未満,最終受診時径 8mm以上,未満でχ2検定を行ったところ有意差を認めた.【結語】欠損孔径は年齢とともに増加する傾向があり,増加症例においては 2~4 歳で増加率が大きい傾向がみられた.初診時の径が大きい症例はもちろんのこと,増加率が大きい症例(0.5mm/年以上)は将来的に治療適応になってくる可能性を考慮したフォローアップが必要と考えた.

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