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まれな合併症にて紹介された高安動脈炎の 2 例
千葉大学医学部小児病態学1),松戸市立病院小児科2)
建部 俊介1),江畑 亮太1),東 浩二1),遠山 貴子1),安川 久美1),鈴木 一広2)

【背景】高安動脈炎は若年女性に好発する,大動脈とその主要分枝を侵す大血管炎である.症状は非特異的であり幼少期には鑑別に挙げにくい疾患であるが,診断,治療の遅れは重大な合併症を心血管系,中枢神経系に生ずる.今回,まれな合併症にて紹介され,高安動脈炎の診断に至った 2 例を報告する.【症例 1】3 歳男児.脳内出血の加療目的で紹介.8 カ月時に不明熱を認め,2 歳 6 カ月時に若年性特発性関節炎の診断でPSL内服を行っていた.高血圧の存在も疑われていた.今回,痙攣重積を来し頭部CT施行,左側頭葉出血と後頭葉低吸収域が認められ転院となる.頭部3DCTAおよび脳血管造影にて左中大脳動脈の壁不整が,胸腹部3DCTAでは大動脈弓とその分枝の壁肥厚,腎動脈狭窄が認められた.高安病脳動脈炎による出血性脳梗塞および腎血管性高血圧と診断した.脳梗塞は保存的に加療を行った.高血圧に対しCa拮抗薬,利尿薬を用いたがコントロール不良でACEIを追加した.炎症反応はPSLにMTX,ASAを併用し陰性化した.【症例 2】18歳女性.原発性肺高血圧症で紹介.3 歳時より労作時息切れ出現,7 歳時に上記診断となり強心剤,利尿剤,ASAを開始した.頭痛,手のしびれ,胸痛など不定愁訴は多かった.また母子関係に問題を抱え心理相談が頻回に行われた.小学校高学年から中学にかけて徐々に運動能が低下,肺高血圧が進行した.今回,高卒を機に肺高血圧管理目的で当院内科へ紹介となる.肺高血圧評価のため,血管造影,CT,MRAを施行.下行大動脈,左総頸,左鎖骨下動脈,肺動脈右上葉枝および左上下葉枝に狭窄が認められた.平均肺動脈圧は79mmHgだった.高安病に合併した肺動脈炎,肺高血圧と考えられた.肺高血圧症に対しボセンタンを開始した.【結語】小児期発症の高安動脈炎はまれであるが,頻度の低い症状や臓器合併症にも注意を必要とする.

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