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先天性重複僧帽弁口の臨床像の検討
東京女子医科大学循環器小児科
坪井 龍生,富松 宏文,石井 徹子,山村 英司,森 善樹,中西 敏雄

【背景・目的】重複僧帽弁口(DOMV)はまれな異常であり,その発生頻度や予後についての詳しい報告はほとんどない.DOMVの臨床像や予後を明らかにすることを本研究の目的とした.【対象】1980年から2007年までに当院で経験したDOMVの28例(男12例,女16例).DOMVの診断は心エコー,手術所見に基づいて行った.【方法】診療録をもとに後方視的に検討した.対象群を房室中隔欠損(AVSD)群と非AVSD群に分け僧帽弁機能の推移について検討した.弁機能については,弁に対して外科的治療介入を行った例と死亡例を弁機能不良群,弁への治療的介入のない例を弁機能保持群とした.【結果】(1)合併奇形:AVSD群は17例(60%)で完全型 5 例(18%),不完全型12例(42%).非AVSD群は11例(40%)で心室中隔欠損 3 例(11%),両大血管右室起始 3 例(11%),純型肺動脈閉鎖 2 例(7%),単心室 1 例(4%),二次孔型心房中隔欠損 1 例(4%),合併奇形のないもの 2 例(7%)であった.弁機能:弁機能不良群は19例(68%),弁機能保持群 9 例(32%)であった.弁機能不良群19例中AVSD群16例(84%),非AVSD群 3 例(16%)であった.弁機能保持群は 9 例中AVSD群 3 例(33%),非AVSD群 6 例(67%)であった.治療介入時期は平均2.3歳でAVSD群0.5歳(1 カ月~7 歳),非AVSD群5.4歳(14日,5 歳,11歳)であった.弁機能保持例の年齢は12.8歳(2 カ月~49歳)であった.死亡 7 例(AVSD群 4 例,非AVSD群 3 例)は僧帽弁閉鎖不全が高度であった.弁置換を受けた 4 例中全例AVSD群であった.【考察・結語】DOMVはAVSDに合併するものが多かった(60%).僧帽弁に対して治療的介入なく弁機能が維持できていた例は全体の32%であった.その67%は非AVSD群で同群の弁機能は比較的保たれていることが多い.今回の検討では追跡期間が13年と比較的短いことや,弁形態についての分析がなされていないため,今後さらに詳細な検討が必要と思われた.

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