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胎児診断により計画的治療が可能となった冠動静脈瘻の 2 例
横浜市立大学医学部小児科1),神奈川県立こども医療センター新生児科2),循環器科3)
山口 和子1,2),川滝 元良2),豊島 勝昭2),柳 貞光2),上田 秀明3),林 憲一3),麻生 俊英3),康井 制洋3)

【症例 1】診断までの経過:妊娠36週時児の心拡大を指摘され当院母体搬送.胎児診断で右冠動脈から左室に流入する冠動静脈瘻(AV fistula)と診断.出生までの経過:胎児心拡大(CTR 45%)あり出生後に心不全が進行する可能性考慮し38週 5 日緊急手術準備のうえ誘発分娩で出生.出生後の経過:体重3,088g,Ap 8/9,左前腋下中線拡張期にLevine 1/6の拡張期雑音を聴取.胸部X線上CTR 60%と軽度心拡大.心エコー上右冠動脈流出部 8mmの拡大あり,僧帽弁後尖を通り左室内に流入する血管あり.心電図正常.左心不全症状なく退院.生後 4 カ月時哺乳不良認め,カテーテル治療施行(バルーンによりフローコントロールのうえ左室入口前の瘤状部分にコイル留置しシャント閉鎖).1 歳時カテーテル検査では異常なく,治療後の経過は順調.【症例 2】診断までの経過:妊娠24週時心奇形疑いで紹介受診.胎児診断でファロー四徴症,肺動脈弁欠損症,AV fistulaと診断.出生後の経過:40週3,108g,経膣自然分娩で出生.出生後徐々に多呼吸・哺乳障害,心電図ST-T変化出現し心臓カテーテル検査施行.単一冠動脈・左前下降枝から肺動脈のAV fistulaを認めた.日齢21合併奇形あり外科的治療施行.肺動脈の入口でfistula結紮.体血圧上昇あり血行動態安定.術後 4 日で心電図ST-T平坦化した.心内修復術も考慮されたが,AV fistula結紮で体血圧上昇・循環安定し根治術待機が可能となった.【考察】冠動静脈瘻の80%は無症状で成人期に動脈硬化などの要因が加わり心筋虚血の症状が出現する.大きなものでは原則的に手術が選択される.カテーテル症例は右心系に開口するものの報告が多い.症例 1 は左室へ開口したがフローコントロールによりカテーテル治療しえた.症例 1,2 とも胎児診断により,注意深い経過観察・治療が可能となった.

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