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当院における感染性心内膜炎の検討
東京都立清瀬小児病院循環器科
松岡 恵,永沼 卓,知念 詩乃,河野 一樹,大木 寛生,葭葉 茂樹,三浦 大,佐藤 正昭

【目的】感染性心内膜炎(IE)は現代でも先天性心疾患の重大な合併症で,死亡率も高い.IE予防に関しては,2007年アメリカ心臓病学会(AHA)のガイドラインが改定されたため,本邦でも歯科処置前の抗菌剤投与などについて今後見直しを要する.今回,IEの適切な管理を明らかにするため当院で経験したIEの症例を後方視的に検討した.【方法】1985~2006年に経験した13名16症例(発症時年齢:0 歳 8 カ月~25歳 6 カ月,性別:男 8 例,女 5 例,再発例 2 名)の起因菌,誘因,基礎疾患,臨床経過について調査した.【成績】起因菌:メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)5 例,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)3 例,α haemo Streptcoccus 1 例,緑膿菌 1 例,緑色連鎖球菌 2 例 ,腸球菌 1 例,起因菌不明 3 例.誘因:歯科処置後に発症した症例は 1 例で予防内服をしていなかった.起因菌はMSSAであった.数カ月う歯を放置していた症例 4 例(MSSA 3 例,起因菌不明 1 例),口腔内外傷 1 例(α haemo Streptcoccus),歯肉腫脹 1 例(緑色連鎖球菌)であった.術後 1 週間で発症した例が 1 例あった(緑膿菌).そのほかの 7 例では明らかな誘因はなかった.基礎疾患:心室中隔欠損 8 例(全例未手術例),肺動脈閉鎖心室中隔欠損術後 1 例,ファロー四徴症術前 1 例・術後 1 例,両大血管右室起始術後 1 例,房室中隔欠損術前 1 例,心疾患なし 1 例.臨床経過:MRSAによる 2 名(3 例 1 名再発)は,いずれも死亡した.他の13例は外科的手術を要さず,抗菌剤投与等で改善した.【考察】黄色ブドウ球菌が起因菌であることが多く,MRSAによる 2 名はいずれも死亡した.起因菌が不明で抗菌剤を開始する場合は,MRSAを想定した選択をするべきである.α haemo Streptcoccusが起因菌であった例は口腔内外傷の 1 例のみで明らかに歯科処置と関連した例はなかった.本成績はIE予防に関するAHAのガイドラインの妥当性を支持するが,本邦にも適用するかどうかは今後の議論が必要である.

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