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左心低形成症候群およびその類縁疾患に対する,動脈管ステント留置症例とPGE1製剤長期使用症例との比較
東京大学医学部小児科1),心臓外科2)
小野 博1),賀藤 均1),平田 陽一郎1),豊田 彰史1),中村 嘉宏1),香取 竜生1),北堀 和男2),竹内 功2),村上 新2)

【目的】当院では左心低形成症候群およびその類縁疾患に対し,第一期手術として,両側肺動脈絞扼術,第二期手術として,Norwood + Glenn手術を行っている.第一期と第二期の間,動脈管開存を維持するために,動脈管に対するステント留置術を採用している.しかし両親の同意を得られなかった症例や,PGE1開始前に高度ないわゆるCoAを認めた症例は,PGE1の持続点滴を行っている.その 2 群において,術前の肺血管およびNorwood + Glennの成績に差異はあるか検討する.【対象】2006年 4 月~2007年12月に当院で手術を行った左心低形成症候群およびその類縁疾患.ステント群(S群)4 例,PGE1群(P群)2 例.【方法】2 群間の平均肺動脈圧,PA index(Nakata index),肺血管抵抗を比較した.肺動脈圧は肺静脈楔入圧を代用し,左右差を認めた症例は左右の平均圧とした.片側にしか挿入できなかった症例はその値を採用した.【結果】カテ時月齢:S群3.7カ月,P群3.0カ月,同体重:S群4.4kg,P群4.2kg,肺静脈楔入圧:S群16mmHg,P群18mmHg,PA index:S群227mm2/m2,P群247mm2/m2,肺血管抵抗:S群2.47Um2,P群2.63Um2であった.Glenn時月齢:S群5.8カ月,P群4.5カ月.S群では 1 例がGlenn循環が成り立たず,BTシャントにtake downした.術後早期抜管が可能だった症例は各群 1 例のみ.S群の多脾症,胆道閉鎖合併例は術後死亡.ICU入室期間は,死亡した症例を除くと,S群14日,48日,84日(現在ICU入室中),P群19日,26日であった.【考案】両群とも術前の平均肺動脈圧,肺血管抵抗,PA indexに有意差は認めない.しかし肺動脈絞扼に左右差がある症例が含まれており,評価が難しい.Norwood + Glenn時のICU入室期間は,症例によりばらつきがあり,そのうえ重篤な心外の合併奇形を有する症例があり,比較が困難である.今後症例が蓄積されると,有意差が認められるかもしれない.

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