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経母体的デキサメサゾン投与による胎児および新生児ラット心臓の心筋の収縮に関与する蛋白への影響
聖マリアンナ医科大学小児科1),薬理学2)
都築 慶光1,2),麻生 健太郎1),武半 優子2),水野 将徳1),有馬 正貴1),後藤 建次郎1),栗原 八千代1),松本 直樹2),熊井 俊夫2),村野 浩太郎1),小林 真一2)

【目的】臨床で行われている出生前に母体へのglucocorticoid(GC)投与による心臓に対する作用機序は不明な点が多い.われわれは胎児心筋の解糖系代謝酵素enolaseの発現増強と解糖代謝への影響について報告した.そこで経母体的dexamethasone(以下DEX)投与が,胎児心臓の収縮に関与する蛋白についてtroponin Tの発現に着目しその役割について検討した.【方法】妊娠ラットにDEXを 1mg/kgを 2 日間投与し,未熟児群(19,21d fetus)および新生児群(1,3,5d neonate)の心臓を摘出し,総蛋白を抽出し,各群のtroponin Tおよび核内のGATA-4の蛋白発現をウエスタンブロット法で,心筋のエネルギーであるATPをルシフェラーゼ反応にて測定した.【結果】troponin Tの蛋白発現は,非投与群で未熟児群から新生児群にいくにつれ増強していた.また,未熟児群の発現はDEX投与により,非投与群より有意に発現が増強し,その発現は非投与群の新生児群の値にまで達した.またtroponin Tのプロモーターを活性する核蛋白内のGATA-4の発現が,DEX投与群で非投与群よりも有意に発現が増強していた.心筋のエネルギーであるATPは未熟児群においてDEX投与により発現が有意に増加していた.【考察】以上の結果から,経母体的DEX投与は,心筋収縮の蛋白を増強させ,未熟な胎児の心臓を発達させる可能性が示唆された.

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