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大動脈奇形に対する術前MDCTの有用性
福島県立医科大学心臓血管外科1),小児科2)
若松 大樹1),黒澤 博之1),佐戸川 弘之1),横山 斉1),桃井 伸緒2),福田 豊2)

【はじめに】大動脈奇形(arch anomaly)における術前形態診断は手術術式の決定に極めて重要である.今回われわれはarch anomaly 2 例に対し64列MDCTを用いた三次元立体画像による評価を行い,手術術式決定の一助とした.【症例 1】生後 4 カ月の男児.出生時動脈管開存症と診断され,左無気肺を合併したため転院となった.来院時のエコー上は大動脈縮窄症(CoA)の所見であった.CT上は,左側大動脈弓で大動脈が右に横走し右下行大動脈という形態であり,蛇行した大動脈と右肺動脈により左主気管支が圧迫されて左無気肺を呈していた.手術は正中切開アプローチにて人工心肺下に肺動脈‐動脈管‐下行大動脈を切離し,端々吻合により再建した.同時に左主気管支の圧迫解除目的に大動脈吊り上げ術も行った.術後上下肢の血圧差は消失.左無気肺は一時的な改善を認めたのみであったが,術後の体重増加,呼吸状態は良好にて現在外来観察中である.【症例 2】生後12日の女児.生後 5 日目にショックとなり近医にてエコー上大動脈離断症(IAA)と診断された.当院搬送後,血管造影上IAA(type B)と診断された.CT上は大動脈小弯側と下行大動脈との距離は18mmと離れていた.主肺動脈の拡張著明なため人工心肺下の操作が必要と判断し,手術は正中切開アプローチにて直接端側吻合による大動脈再建と肺動脈絞扼術を施行した.術後上下肢の圧較差は消失したが,術後不整脈にて失った.【結語】arch anomalyの場合,経胸壁心エコーでは大動脈弓や分枝の十分な評価が難しく,血管造影は侵襲度の高さから術前状態によっては制限される場合もある.CTの多列化により,小児の速い心拍に対しても短時間でより正確な評価が可能となった.術前のMDCTによる立体構築画像は大動脈形態および周辺器管との位置的,構造的関係を把握する点において優れていると考えられる.

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