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根治術前術後の形態的診断にに3D-CTが極めて有用であった,肺動脈弁欠損の 1 例
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科1),小児心臓外科2)
石戸 博隆1),竹田 津未生1),小林 俊樹1),先崎 秀明1),増谷 聡1),岩本 洋一1),岡田 尚子1),加藤 木利行2),鈴木 孝明2),枡岡 歩2),岩崎 美佳2)

【背景】肺動脈弁欠損は,肺動脈の異常拡張による気管・気管支の圧排を背景とし生直後より重篤な呼吸・心不全を生じ得る.内科治療のみの予後は極めて不良で,早期の一期的修復が望ましいが,形態的診断に際し心カテーテル検査が困難なケースもある.【目的】ファロー四徴(ToF)・肺動脈弁欠損の症例を経験し,3D-CTで形態的診断を行い根治術を施行したので報告する.【症例】女児.胎児エコーでToF・肺動脈弁欠損・左右肺動脈の瘤状拡張を指摘.子宮収縮進行のためGA 36w 1d緊急帝切で出生.体重1,856g.仰臥位で挿管・呼吸管理も呼吸性アシドーシスが改善せず,腹臥位で管理し安定.day 55,事故抜管の際仰臥位では換気不能で,徐脈.このため深い鎮静下に早期外科手術の方針も,腹臥位にて心カテーテル検査は不可能で,経胸壁心エコーにも困難が伴った.day 65に3D-CT施行.左右肺動脈の形態を正確に評価し,day 75(BW;3,180g),VSD patch閉鎖・主/両側肺動脈縫縮術・右室流出路形成術を施行.その後,抜管をめざしたが,努力性呼吸著明.心エコー上左肺動脈の拡張がいまだ著明で左主気管支の圧排を疑った.day 100に3D-CT施行し左肺動脈と気管支との位置関係を確認.day 105,肺動脈吊り上げ術 + 胸骨閉鎖施行.以後呼吸状態は改善しday 158に抜管.生後 6 カ月で退院.【考案】本症例は生直後より呼吸障害が重篤で,また腹臥位管理のため心臓カテーテル検査が不可能であったが,64列CTを用いた3D-CTで外科手術に必要・十分な情報を得た.被爆の問題が懸念されたが,文献上は通常の心臓カテーテル検査におけるそれとほとんど差がなく,安全に施行し得た.また体重 3kg前後だったが解像度は満足のいくものであった.【結語】循環・呼吸状態の不安定な先天性心疾患患者の形態的診断においては,3D-CTは極めて有用と考えられる.

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