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左右心室間の同調障害を来し重症心不全を呈した複雑心奇形に対する心臓再同期療法(CRT)の経験
榊原記念病院小児科
西口 康介,朴 仁三,内藤 幸恵,石橋 奈保子,木村 正人,佐藤 潤一郎,渡部 珠生,嘉川 忠博,西山 光則,森 克彦,村上 保夫

【はじめに】成人領域では,内科的治療に抵抗性の心室内伝導障害(左脚ブロック)を伴う難治性心不全に対し心臓再同期療法(CRT)が有効であるとされている.しかし,小児,先天性心疾患例での報告はまだ限られている.複雑心奇形に伴う重症心不全の 2 例に対しCRTを施行し有効であったので報告する.【症例 1】生後 4 カ月女児.診断はECD,DORV,PS.生後 1 週から左室収縮能の低下を認め,利尿剤,ACE阻害剤に加えcarvedilol開始.左室内腔の著明な拡大,収縮能の低下が進行.心臓カテーテル検査にてQp/Qs = 1.8,左右心室収縮の同調障害を認め当院へ転院.入院時,胸部X線上CTR 72%,心電図上QRS幅132ms.心エコーでは,左室は著明に拡大しており,LVFS計測不能.拡張型心筋症合併を疑いBatista手術を施行.1 カ月後にGlenn手術と同時にCRTを開始したところ左室収縮能および心不全が著明に改善した.【症例 2 】15歳男児.DORVの診断で,7 歳時に心房中隔欠損形成,Glenn,TCPC手術施行.8 歳時より心不全症状出現し,9 歳時よりcarvedilol導入.その後も心不全の悪化を繰り返していた.入院時,NYHA class 3~4,胸部X線上CTR72%,心電図上QRS幅170ms.心エコーでは,両心室は著明に拡大し,LVFS 10.5%,中等度の僧帽弁逆流を認め,心室間交通を介して収縮期に右室から左室への逆流を認めた.CRT施行後,臨床症状はNYHA class 2 に改善し,胸部X線,心エコー所見も徐々に改善傾向を認めている.【結語】心室間のdyssynchronyを生じ,心室間交通を介してdamping chamberとなるような血行動態を呈した複雑心奇形の重症心不全例に対し,CRTは有効な治療法と考えられる.

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