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SS-A抗体関連高度房室ブロックに続発した拡張型心筋症に対して右室心外膜ペーシングから両心室ペーシングに変更し心不全が改善した10歳女児例
旭川医科大学小児科
真鍋 博美,杉本 昌也,梶野 浩樹,藤枝 憲二

【背景】cardiac resynchronization therapy(CRT)は重症心不全患者に対する治療として認められているが無効例が約30%存在する.このため適切な患者選択や植込み後の管理が重要である.【症例】10歳女児.母体SS-A抗体陽性.胎児徐脈,胎児水腫を指摘されていた.乳児期診断:洞不全症候群,高度房室ブロック,完全左脚ブロック.心内奇形はなかった.〈経過〉3 歳で徐脈が進行し右室心外膜ペーシングが施行された.以降全身状態は良好であったが,8 歳ごろから心拡大が進行し,心エコーではLVESが徐々に低下してきた.このためvalsartan,digoxin,carvedilolの内服を開始された.しかし心不全は悪化し10歳で全身浮腫,腹水貯留と心拡大の進行を認め入院となった.〈検査所見〉胸部X線:CTR 72%,心電図:CLBBB,QRS幅270msec,自己心室レートは50/分以下でありすべてペーシング波形であった.心エコー:LVDd 68mm,LVFS 0.05,severe MR,中隔dyskinesis,BNP 1,730pg/ml,心臓カテーテル検査:CI 2.2l/min/m2(熱希釈法),PAWP 23mmHg.〈至適ペーシング部位の検討〉現在の右室心外膜,心房‐左/右心室(経静脈),心房‐両心室(経静脈)でのペーシングを比較したところ心房‐両心室ペーシングで最もQRS幅が短縮しCIが上昇した.この結果により患者の心不全改善にはCRTが有効と判断し経静脈的にペースメーカ植込みを行った.〈経過〉AV-delayやVV-delayの設定は心臓組織ドプラ解析や動脈圧心拍出量を用いて調整した.術後 1 カ月でCTRは72%から58%に,BNPは1,730pg/mlから258pg/mlに改善し腹水も消失,NYHA分類はIIIからIIになり退院でき,通学ができるようになった.【結語】重症心不全を伴う拡張型心筋症に対して至適ペーシング部位を確認しCRTが有効と判断した.急性効果は得られたが慢性効果について慎重な経過観察が必要である.

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