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心臓再同期療法(CRT)が著効した,右室ペーシング後の先天性完全房室ブロック(CAVB)の心不全例
新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野1),呼吸循環外科学分野2)
鈴木 博1),沼野 藤人1),星名 哲1),長谷川 聡1),高橋 昌2),渡辺 弘2),内山 聖1)

【背景】ペースメーカ植込み(PMI)後のCAVB症例の 8~26.6%が拡張型心筋症様の経過をとる.近年,重症心不全治療としてCRTが注目を集めているが小児例は限られており,適応や設定法は確立していない.今回,VVI,RVペーシング後に拡張型心筋症様の経過をたどったCAVB例にCRTが著効したので報告する.【症例】1 歳 5 カ月,男児.主訴:浮腫.現病歴:CAVBと胎児診断され,出生当日にPMI(VVI,leadはRV室前壁,rate 140/min)を施行された.術後12時間で心不全を認め,rate 120/minにし改善した.その後順調に経過した.しかし 1 歳 5 カ月時に浮腫を認め,入院した.入院時,心エコ‐ではLVDd 42.1mm(139% of normal),EF 27%,BNP 901pg/mlで拡張型心筋症様であった.ECGはpacing rhythmでHR 120bpm,QRS時間136msec,LBBBパターンであった.保存的治療で改善せず,1 歳 7 カ月時に開胸下でCRTを施行した.術前の経胸壁心エコーでは,心室間のdyssynchronyを認め,strainによる評価では左室収縮dyssynchronyはわずかであったが,中隔の壁運動が低下していた.術中経食道心エコーなどで,DDD等他のペーシング法と比較し,CRTが最も有効と判断し行った.右室リードは以前のものを利用し,新たに心房リードを左心耳に,左室リードを心尖部側壁に装着した.CRT後13カ月では,症状はなく,心エコーでLVDd 33.4mm(107% of normal),EF 72.1% BNP 16.7pg/mlへ著明に改善した.【結語】PMI後重症心不全のCAVB例にCRTは有効だった.右室ペーシング後に重症心不全となったCAVB症例に対して,CRTへのupgradeは考慮すべき治療法の一つである.

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