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小児期からの心血管病の予防—小児期メタボリックシンドロームの実態と介入のポイント
東京都立広尾病院小児科1),日本大学医学部小児科学系小児科学分野2)
原 光彦1),平野 幹人1),伊東 三吾1),岡田 知雄2),原田 研介2)

【はじめに】心血管病予防のためには,小児期からのメタボリックシンドローム(MetS)対策は重要である.健常小学生におけるMetSの頻度,血中アディポサイトカインや生活習慣と動脈硬化危険因子集積数(RF数)の関係について検討した.【対象と方法】学童健康診断を受診した122名(男児:71名,女児:51名)の小学 4 年生を対象とした.身体計測(身長,体重,腹囲),血圧測定を行い,空腹時採血で血液検査(TC,TG,HDLC,FBG,IRI,leptin,adiponectin)を施行した.さらに,保護者を対象として生活習慣に関するアンケート調査を施行した.【成績】対象の平均年齢は9.6±0.5歳,平均肥満度は-0.3±15.0%であった.MetSの頻度は122名中 1 名(0.8%),RFが 2 つのMetS予備軍の頻度は 7 名(5.7%)であった.RF数と血中アディポサイトカインとの関係は,adiponectinとの間には有意な相関がないが,leptinとの間に有意な正相関が認められ(r = 0.686,p < 0.0001),RFが多くなるほどleptinは有意に高値を示した(3.4±2.3,7.5±5.8,16.7±7.9,p < 0.05).RF数と,早寝,早起き,朝食摂取,運動習慣(2 回/以上)に関連があり,これらの生活習慣を有する群は集積数が有意に少なかった.特に,運動習慣を有する群は,肥満が少なく,糖代謝指標や血清脂質プロファイルが良好でleptin値も低値であった.【結論】健常小学生におけるMetSの頻度は0.8%であり,成人領域でMetSの代理マーカーと考えられているadiponectinではなく血中leptinがRF数を良好に反映していた.学童期MetSの介入の際は,生活リズムの改善に加え,2 回/週以上の運動習慣の確立が重要と考えられた.

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