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小児期における心血管危険因子数の変化と個々の心血管危険因子値との関係
国立病院機構鹿児島医療センター小児科1),鹿児島市医師会小児科2)
吉永 正夫1),鮫島 幸二2),田中 裕治1),荒田 道子1),和田 昭宏1)

【背景および目的】小児期において,心血管危険因子数の変化と個々の危険因子数の値との関係を縦断的に研究されたデータがない.【対象と方法】2003~2005年に鹿児島市の生活習慣病予防検診を受診した小学生(6~12歳)のうち,2 年連続で受診した319名(男子213名,女子106名).心血管危険因子として内臓肥満(腹囲の増加),高血圧,高中性脂肪血症,低HDL-コレステロール血症,空腹時血糖高値の 5 項目とした.メタボリックシンドロームは 3 項目以上の異常値があるものとした.したがって,日本で発表された成人および小児の診断基準と若干異なっている.個々の生活習慣病の基準値は日本人小児の値として発表されたものを用い,90パーセンタイル値に近い値とした.初年度と次年度のリスク数の変化と個々の危険因子の値の差を検討した.肥満の程度としてBMI SD scoreを,homeostasis model assessment(HOMA)of insulin resistance(HOMA-IR)をインスリン抵抗性の指標として用いた.年齢,性の影響を除外するため,重回帰分析を行い検討した.【結果】 1 年間の間にBMI SD scoreは有意には増加していなかったが,メタボリックシンドロームの頻度は 5 名(1.6%)から47名(14.7%)と著明に増加した(p < 0.0001).心血管危険因子数の変化は各危険因子値の変化と下記の順に強い関係を有していた;中性脂肪(t 値および p 値:8.84,p < 0.0001),収縮期血圧(4.95,p < 0.0001),腹囲(4.85,p < 0.0001),拡張期血圧(4.77,p < 0.0001),HDL-コレステロール(-4.59,p < 0.0001),BMI SD score(2.61,p = 0.009),HOMA-IR(2.30,p = 0.02).【結論】肥満小学生は肥満の程度が著増しなくてもメタボリックシンドロームの頻度が増加することがわかった.また心血管危険因子が増加するとすべての心血管危険因子値が悪化することから,小学生時代から心血管危険因子のチェックと一次,二次予防が重要と考えられる.

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