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新生児完全大血管転位の冠動脈走行評価におけるMDCTの有用性
自治医科大学とちぎ子ども医療センター小児科1),小児心臓血管外科2)
森本 康子1),保科 優1),白石 裕比湖1),平久保 由香1),市橋 光1),河田 政明2),立石 篤史2)

【背景】新生児完全大血管転位におけるエコーを用いた冠動脈の走行評価は時に困難を生じ,心臓カテーテル検査が必要になる症例もあるが,患児に対する侵襲も大きい.Jatene手術を予定した 2 症例に対し,MDCT(64列マルチスライス)による冠動脈評価を施行し有効だったので報告する.【症例】症例 1 は 3 カ月男児.エコー診断はd-TGA, small muscular VSDs,PDA,PFO,冠動脈はShaher 1 型と考えられたが,大動脈弁後方の交連に近接しており,壁内走行の鑑別が必要であったため,日齢 8 気管内挿管,鎮静下にMDCT撮影施行.3D再構築像にてShaher 1 型であることを確認した.日齢20 Jatene手術施行,日齢49 退院,外来経過観察中.症例 2 は 2 カ月男児.エコー診断はd-TGA,PDA,冠動脈はShaher 4 型.日齢31 鎮静,人工呼吸管理下にMDCT施行.3D再構築像にてShaher 4 型が確認された.RSV罹患のため手術待機,低酸素血症が進行したため日齢58 PICUベッドサイドにてエコーガイド下にBAS施行,日齢76 Jatene手術施行.術後経過順調である.【考察】従来のCTでは新生児の冠動脈を描出することは困難だったが,MDCT(3D再構築像)では鮮明な左右冠動脈の走向が描出され,Jatene手術に際し有用な情報を得ることができた.エコーによる評価が困難な例に対し血管造影検査よりも低侵襲な方法として今後MDCTが活用され得ることが示唆された.

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