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64列MDCT画像再構成における理想的な心位相の検討—小児冠動脈MDCTにおける被曝低減への試み
あかね会土谷総合病院小児科1),放射線科2)
田原 昌博1),脇 千明1),林 知宏1),佐藤 友保2)

【背景】先天性心疾患や冠動脈病変の経過観察に用いられている64列multidetector row CT(MDCT)は短時間で行えるという利点の反面,被曝という欠点もあり,被曝線量も決して少なくないとされている.心電図非同期撮影は同期撮影より被曝線量が明らかに低くなるが,冠動脈撮影は心電図同期でないと画像評価困難である.一般的に心電図同期撮影は全心位相のデータを取得後に良好な画像を選び出す.検査前に最適心位相が予測可能なら,画像再構成に必要ない心位相で撮影線量を下げて被曝を低減させることができる.MDCT画像再構成における理想的な心位相を検討したので報告する.【方法】対象は川崎病や先天性心疾患の29人で計37回MDCTを施行した.CT施行時の平均月齢38.0±45.9カ月(0.3~147カ月).GE横河メディカル製Light Speed VCT・Advantage Workstation 4.2を用い,管電圧100kV,管電流Auto mA,ピッチ0.24,回転速度0.35sec/rotationで,ヨード造影剤を末梢静脈から注入し,test injection法を用いて心電図同期撮影を行った(心拍呼吸抑制未施行).R-R間隔を100%で表し,画像を再構成した心位相を 5%間隔で示した.心拍数120bpm以上をF群(主に乳児),80以上120bpm未満をM群,80bpm未満をS群とし,後方視的に各群間で心位相を比較し,さらに心電図変化と心位相との相関関係も検討した.【結果】得られた心位相は平均49.7±19.5%.年齢と心位相に有意な相関を認めたが(p = 0.04),心拍数とは有意な相関を認めなかった.3 群間の比較ではF・M群とS群の間に有意差を認めた(F群47.5±21.3%,M群47.1±16.4%,S群78.3±2.9%)(ともにp = 0.01).各群での心位相と心電図変化では有意な相関項目はなかった.【考察】心拍数80bpm以上では管電流のmodulation phaseを20~60%に設定することである程度の被曝低減が期待できる.しかしそれ以外の心位相で再構成した例も存在し,心電図などでそれを事前に予測することは困難である.

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