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診断に造影CTによる3D構築像が有用であったpulmonary artery slingの 2 例
北海道社会事業協会小樽病院小児科1),北海道立子ども総合医療・療育センター循環器センター2), 昭和大学横浜市北部病院循環器センター3)
近藤 謙次1),畠山 欣也2),阿部 なお美2),高室 基樹2),富田 英3),横澤 正人2)

【背景】pulmonary artery sling(以下PA sling)は,左肺動脈が右肺動脈から起始し,気管と食道の間を迂回して左肺に至るまれな疾患である.【目的】喘鳴を主訴とする 2 例のPA slingを経験した.その診断および手術法の選択のため,造影CTによる3D構築画像が有用であったので報告する.【症例】症例 1 は,8 カ月男児.出生直後より喘鳴を認めたが,酸素投与により消失した.右胸心,PA sling,右主気管支の狭窄および心房中隔欠損と診断された.外来で経過観察されていたが,生後 5 カ月ごろより気道感染のたびに喘鳴が出現.啼泣によりチアノーゼと徐脈を呈するため,当センターに紹介された.症例 2 は,4 歳 8 カ月女児.1 カ月時に喉頭軟化症と診断され,外来経過観察されていた.その後も,喘鳴出現のたびに入退院を繰り返していた.1 歳 5 カ月時に気管の右方偏位を認め,PA slingおよび心房中隔欠損と診断された.喘鳴の頻度は減少しているため,経過観察の方針となっていたが,セカンドオピニオンのため当センターを受診した.【経過】2 例とも造影CTを施行し,3D画像を構築した.左肺動脈が右肺動脈から起始し,気管を圧排している様子が明瞭に描出可能であった.人工心肺下で左肺動脈の付け替え術と心内修復術を施行した.症例 1 が術後 7 日目,症例 2 は,術後当日に抜管可能であった.2 例とも現在,喘鳴もなく良好に経過している.【まとめ】PA slingは,まれな疾患であるがその診断および手術法の確定のため,造影CTによる3D構築像は有用であると考えられた.

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