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胎児心不全診断における組織ドプラ法の有用性と限界
はらだ小児科医院1),秋田大学医学部小児科2)
原田 健二1),岡崎 三枝子2)

【目的】組織ドプラ法を用いることで右室壁運動速度とTei index,パルスドプラ法を組み合わせることで心房圧の推定が可能であるが,胎児における本法の有用性に関してどの指標が優れているかの知見は少ない.本研究の目的は胎児におけるこれらTDIから得られる指標の有用性について検討すること.【方法】対象は心不全徴候(心臓拡大と三尖弁閉鎖不全)のある胎児10例と正常胎児36例.Aloka-SSD-6500を用いてTDIから得られる三尖弁輪部壁運動速度(収縮期最大速度S,拡張早期最大速度Ea,等容収縮期壁運動速度IVV,IVVを加速時間で除したmyocardial acceleration IVA),パルスドプラ法から得られる三尖弁流入血流速度(拡張早期最大速度E)を計測した.さらに,TDIからTei indexを求めた.右心房圧の指標にはE/Eaを用いた.【成績】右心室正常壁運動S,Ea,IVV,IVAは在胎週数とともに増加し,右心房圧の指標とされるE/Eaは年齢による変化を認めなかった.心不全を有す10例は正常胎児に比し高いE(46±11 vs 34±7cm/s,p < 0.01),低いEa(4.7±0.6 vs 5.6±1.2,p < 0.05)を示したが,Sは有意な差は認めなかった.心房圧の指標であるE/Ea(9.7±1.8 vs 6.2±1.0,p < 0.01)とTei index(0.78±0.10 vs 0.55±0.50,p < 0.01)は正常胎児に比し有意に高値であった.IVVおよびIVAは正常胎児に比し有意に低値であったが,計測できた症例はわずか 5/10例であった.【結論】心不全と三尖弁逆流があると,前負荷の増大による三尖弁流入血流速度は増加し壁運動速度は偽正常傾向を示す.myocardial accelerationは検出性の点で心不全診断に限界がある.TDIから得られる指標のうちTei indexおよびE/Eaが心臓機能異常を最もよく反映する指標と考えられた.

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