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小児慢性腎不全患者における左室拡張能の評価
東京女子医科大学循環器小児科
富松 宏文,中西 敏雄,森 善樹,山村 英司,石井 徹子

【背景】小児腎不全患者における心機能評価は腎移植を行ううえで重要である.しかし,前および後負荷など検査時の状態が大きく異なることがあるため,心機能を適切に評価できていないことが推測される.とりわけ拡張能についての評価はこれまで十分になされているとはいえない.【目的】小児腎不全患者の左室拡張機能に及ぼす因子を検討することを目的とした.【対象】20歳未満の慢性腎不全患者33人,女性 9 人,男性24人,検査時年齢:1~18歳(平均11歳),透析患者25人(腹膜透析:22人,血液透析:3 人),非透析患者 8 人.【方法】心エコー法において,左室拡張末期径,左室収縮末期径,左室拡張末期後壁厚,左室流入血流波形(E波,A波,E波の減速速度DCT),心室中隔側での僧帽弁輪後退速度emなどを測定した.また,これらから左室短軸平均短縮率(LVSF),左室心筋重量係数(g/m2),E/A,E/emなどを求めた.対象患者をE/em 11.5以上を拡張障害群,11.5未満を非拡張障害群と定義し,各指標における 2 群間の関係を検討した.【結果】拡張障害群は 8 人,非拡張障害群は25人.拡張障害群対非拡張障害群の比較をすると年齢(歳):10.5±5.3 vs 10.6±5.3(NS),透析期間(年):1.3±1.0 vs 2.0±3.4(NS),LVSF:0.35±0.1 vs 0.34±0.07(NS),E波(cm/s):100±15.9 vs 92±22.3(NS),A波(cm/s):87.4±20.2 vs 59.9±24.7(p < 0.05),E/A:1.2±0.36 vs 1.3±0.48(NS),DCT(msec):129±89 vs 167±62(NS),em(cm/s):7.6±1.4 vs 12.3±4.2(p < 0.05),左室心筋重量係数(g/m2):124±54 vs 95±24(p < 0.05)であった.【考察,結語】左室拡張障害の指標としてE/emを用いて慢性腎不全患者を左室拡張障害の有無に分けると,拡張障害群では有意に左室心筋重量係数が大きく,透析期間や年齢には有意差を認めなかった.腎不全患者においては,血圧など左室肥大を来さないような管理を行うことが重要であると考えられた.

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