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左右短絡性先天性心疾患における心負荷の指標としてのBNPの役割
国立成育医療センター循環器科
金 基成,林 泰佑,江竜 喜彦,進藤 考洋,金子 正英,磯田 貴義

【背景】BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)は心筋細胞から分泌されるホルモンで,心筋の前負荷・後負荷の増大により分泌量が増加し,心不全の指標としての意義が確立しているが,左右短絡性心疾患における血行動態との関連についての報告は多くない.【目的】左右短絡性心疾患における心負荷の程度とBNP値の関係を明らかにすること.【方法】2006~2007年の 2 年間に当院で心臓カテーテル検査を行った心室中隔欠損症(VSD)20例,心房中隔欠損症(ASD)19例を対象とした.姑息術後の症例,他の複雑心奇形の合併例は除外した.検査入院時のBNP(「M102シオノギBNP®」にて測定)値と,心臓カテーテル検査にて計測した肺体血流比(Qp/Qs)および右室拡張末期容積(RVEDV)の関係を検討した.【結果】VSD群において,対象群の月齢は 1~363m(中央値20m),BNPは平均24.2±20.9pg/ml,Qp/Qsは平均1.86±1.03であり,BNPとQp/Qsの積率相関係数は0.78であった.BNPのcut-off値を15pg/mlとしたとき,Qp/Qs > 1.5の診断における感度89%,特異度67%であった.ASD群において,対象群の月齢は 6~158m(中央値49m),BNPは平均70.1±83.0pg/ml,Qp/Qsは平均2.77±0.85,RVEDV(% of normal)は213±66%であった.BNPとQp/Qsに明らかな相関を認めなかったが,BNPとRVEDV(% of normal)の積率相関係数は0.68であった.【結論】VSDにおいてBNPとQp/Qsは有意な相関を示した.ASDにおいてはQp/QsよりRVEDVのほうがBNPとより強い相関を示した.左右短絡性先天性心疾患において,BNPは左右短絡による心室容量負荷の有用な指標となり得る.

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