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ファロー四徴症周術期における脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の検討
東京都立清瀬小児病院循環器科1),心臓血管外科2)
知念 詩乃1),三浦 大1),永沼 卓1),松岡 恵1),河野 一樹1),大木 寛生1),葭葉 茂樹1),佐藤 正昭1),保土田 健太郎2),寺田 正次2)

【目的】ファロー四徴症(TOF)では,術後遠隔期の脳性ナトリウ利尿ムペプチド(BNP)分泌は右室容量負荷を反映することが知られているが,周術期のBNPに関する報告は少ない.そこで術前術後におけるBNP値を規定する血行動態の因子を調べ,その推移から適切な心内修復術の時期を検討した.【方法】2002年から2007年まで,TOFの診断で入院した33例を対象に,術前(26例),シャント術後(11例),心内修復術 6~18カ月後(29例)に行った心臓カテーテル検査中に血漿BNP値を測定し,血行動態の各因子について回帰分析を行った.また,乳児期に一期的心内修復術を行った20例と,シャント術後,1 歳以降に二期的心内修復術を行った 9 例について,BNP値と肺動脈インデックス(PAI)の関係を検討した.【結果】術前では,BNP値と有意に相関した指標はなかった.シャント術後ではBNP値は肺動脈圧楔入圧と相関する傾向があった(r = 0.994,p = 0.071).心内修復後では,肺動脈平均圧(r = 0.503,p < 0.001),右室拡張末期容積(r = 0.287,p = 0.050),左室収縮期圧(r = 0.48,p = 0.001)と有意に相関した.一期的手術例では,術前のPAIが術後BNP値と相関する傾向があり(r = 0.487,p = 0.056),PAIが低いほどBNP値が高値であった.二期的手術の例では,術前のPAIとシャント術後のBNP値が有意に相関し(r = 0.891,p = 0.017),PAIが高いほどBNP値が高値であった.【考察】TOFにおけるBNP値は,シャント術後は左心機能を,心内修復術後は右心機能を主に反映すると考えられた.術後のBNPに基づくと,1 歳未満でもPAIが高値の場合は一期的手術を,PAIが低値の場合は二期的手術の選択が望ましい.

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