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単一心拍からの拡張末期圧断面積関係の算出
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科
増谷 聡,先崎 秀明,岩本 洋一,石戸 博隆,小林 俊樹,竹田 津未生,増谷 聡,新井 稚子,渋谷 麻子

【背景】拡張末期圧断面積関係(EDPAR)は,受動的心室拡張能を表す最も有用な指標であり,心室拡張能を包括的に理解することができる.しかしながら,この指標を得るには負荷変化時に連続的に心室圧断面積関係を構築する必要があり,その煩雑さが臨床応用の大きな妨げとなっている.今回われわれは,単一心拍からEDPARを算出する方法の妥当性を検討したので報告する.【方法】(1)EDPDRは心室サイズを正規化した場合ほぼ共通の形をしている,(2)心室容積データ変化と断面積データ変化はほぼlinearに相関するという 2 つの仮定の下に,ex vivoの圧容積関係から得られた報告値を用い,EDP = 28*EDAN2.8(EDAN = 正規化した拡張末期断面積EDA),Ao = A*(0.6~0.006*P)(AoはEDPARの断面積切片,A,Pは任意の断面積と圧の値)の関係式からEDP = α*EDAbにおけるα,βの係数を決定し,EDPARを予測した.予測したEDPARは下大静脈閉塞中に呼気時の拡張末期点を結んで構築したEDPARと比較検討した(各種先天性心疾患患者14例).【結果】予測値と実測値の平方二乗平均誤差は3.8±3.6mmHgで全体としてよい相関を示したが,平方二乗平均誤差が0.2mmHgと非常によく再現されるものから8mmHgと解離を示すものまで症例によりばらつきが大きいことが示された.【考察】単一心拍から予測したEDPARはおおむね良好にEDPARを予測し得ると思われる.われわれのこれまでの検討から(2)の仮定はほぼ成立しており,症例による予測値のばらつきは,おもに(1)の仮定に起因するものと考えられる.したがって今後疾患群におけるEDPDRの特徴を検討することにより,その因子を予測式に組み入れさらにこの方法論の向上が期待されると考える.本方法は,拡張期のある 1 点の圧と断面積が計測できればよいため,非侵襲的方法にまで拡大応用の可能性を秘めており今後の検討に値すると考える.

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