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圧較差のない治療後大動脈縮窄における心室血管連関異常—大動脈および左室のdp/dtmax関係から
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科1),小児心臓外科2)
増谷 聡1),先崎 秀明1),岩本 洋一1),石戸 博隆1),竹田 津未生1),岡田 尚子1),小林 俊樹1),岩崎 美佳2),枡岡 歩2),鈴木 孝明2),加藤 木利行2)

【目的】大動脈dp/dtmaxは,左室dp/dtmaxのほか,平均血圧と大動脈characteristic impedance(Zc)により規定されることを正常大血管において報告してきた.圧較差の残存しない治療後の大動脈縮窄(CoA)において,左室大動脈連関をdp/dtmax連関から検討する.【方法と結果】治療後のCoA 11例と,対照群として年齢(平均4.5歳)をmatchさせた川崎病後の30例を検討した.心臓カテーテル検査時に,高精度圧・フローワイヤーを用い,左室圧,引き抜き大動脈圧,同時に大動脈フローを計測し,左室および大動脈のdp/dtmax,Zc,末梢血管抵抗,末梢血管コンプライアンスを求めた.左室dp/dtmaxはCoAと対照で有意差を認めなかったが(1,506 vs 1,397mmHg/s),大動脈dp/dtmaxはCoA群で大きく増大し(712 vs 498mmHg/s,p < 0.05),dp/dtmaxの大動脈左室比もCoA群で有意に大きかった(0.47 vs 0.37,p < 0.05).安静時の平均血圧は両者で大きく異ならない(79 vs 77mmHg)ことから,近位部壁硬度の著明な増加(341 vs 185 dynes-sec/cm5,p < 0.05)が大動脈dp/dtmaxの増大をもたらす一つの要因と考えられた.【結論】本検討は,大動脈縮窄において手術あるいはカテーテル治療により圧較差が消失したとしても心室血管機能に異常が存続し得ることを改めて示唆するものであり,今後これらの心室・血管の個別および統合関係における異常と高血圧や予後との関連,ACE阻害剤,β遮断剤などの治療との関連を前方視的に検討していきたい.

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