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造影剤の末梢血流動態への影響
京都府立医科大学大学院医学研究科小児循環器・腎臓病学
糸井 利幸,小林 奈歩,河井 容子,加藤 竜一,佐藤 恒,問山 健太郎,小澤 誠一郎,白石 公,浜岡 建城

造影剤は,高い粘性により血管内皮での「ずり応力」の増大によりエンドセリン産生を誘導して血管抵抗を増強することが報告されている.【目的】浸透圧と粘性が異なる 2 種類の造影剤,iomeprol(I 群)とiohexol(O群)の小児の末梢血流に対する影響の後方視的検討.【方法】2007年 9 月から2008年 1 月までに施行された心臓カテーテル検査症例のうちデータ抽出が可能であった I 群18例,O群18例を対象とした.I 群,O群の生食に対する浸透圧比はそれぞれ約 2,約 3で,粘度(37°C,mPa・s)はそれぞれ7.0,10.6である.パルスオキシメーターに装備されたperfusion index(PI)は,末梢血流量と強く相関するとされている.今回はMasimo SET® Radical TM(V5.0)に記録された 2 秒ごとのPI値を抽出し,SatPartnerを用いてPIトレンドを作成して末梢血流の経時変化とし,検査終了時から遡って60分前からの経時的PI変動を検討した.【成績】対象疾患はチアノーゼの有無,川崎病も含めてさまざまで,年齢(2.2歳/1.3歳),体重(11.4kg/8.4kg),Ht値(41.7%/44.9%),体重当りの造影剤投与量(4.4ml/5.1ml)いずれも 2 群間(数値は I 群/O群の平均値)に有意差はない.PI値の加算平均値トレンドは I 群で4.1から3.2へ,O群では4.9から3.9へと両群ともに減少しており,その程度はO群のほうが強い傾向にあった(傾きがそれぞれ-5.96×10-4と-6.26×10-4).解析開始前 1 分間の平均値に対する低下率もO群が I 群より高い傾向にあった.【結論】造影剤投与は末梢血流を低下させることが示された.粘度の高い造影剤は末梢血流の低下を助長する可能性があり,末梢循環の低下例,臓器機能低下例に対しては造影剤の粘度を考慮して選択すべきと考えられた.

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