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正常小児における左室圧最大変化率(dP/dtmax)の変化
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科
石戸 博隆,先崎 秀明,岡田 尚子,岩本 洋一,増谷 聡,竹田 津未生,小林 俊樹,鈴木 孝明,加藤 木利行

【背景】左室圧最大変化率(dP/dtmax)は圧データの一次微分の最大値として求めることができる左室収縮性の簡便な指標であり,種々の先天性心疾患の収縮性評価に応用可能と思われるが,小児における正常値に関する報告はない.そこで今回われわれは小児における正常値を検討した.【方法】肺体血流比 1.1 未満である微小短絡の動脈管開存(PDA),心室中隔欠損の患者,および種々の心疾患(PDA,冠動静脈瘻等)を疑われてカテーテル検査を施行したが異常がなかった患者計44名において,高精度圧測定ガイドワイヤーを用いて測定した左室圧からdP/dtmaxを算出し,その規定因子について検討した.【結果】dP/dtmaxは,患者の年齢,収縮期血圧,心拍数とそれぞれ有意な正の相関を示したが,拡張末期容積係数とは相関がなかった.また,負荷内包の心収縮性の指標である収縮末期エラスタンスとよい正の相関を示した(r = 0.89,p < 0.001).多変量解析では,dP/dtmaxは,収縮期血圧,心拍数と有意に相関し,約78%が規定された(r = 0.89,p < 0.001).【考察】正常小児における左室dP/dtmaxは,血圧,心拍数に応じほぼ一定の値をとる.これらは,今後小児心疾患の心収縮性評価の簡便な指標としての基準値を提供し得るうえで非常に有用であると思われる.また同時に,年齢による血圧の上昇を反映した小児におけるdP/dtmaxの変化を示した今回の結果は,成長に伴う血管壁(後負荷)の変化に対応する左心室収縮性の適応を示すものとして新しい知見である.

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