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動脈管開存が左室心筋に与える影響 第 2 報
KKR立川病院小児科1),モンゴルハートセービングプロジェクト2)
堀口 泰典1),富田 英2),羽根田 紀幸2),野木 俊二2),檜垣 高史2),田村 真通2),上田 秀明2),片岡 功一2),山本 英一2),高田 秀実2),矢野 宏2)

【背景】動脈管開存(PDA)による左室容量負荷は心筋重量当たりの冠血流量を減少させ心筋障害の原因となり得ることを2007年の本学会で報告した.【目的】PDAが左心室心筋灌流に及ぼす影響を引き続き検討した.【方法】コイル閉鎖術を行った10例のPDA患者(男児 3 例,女児 7 例)を対象とした.年齢は 1 歳 2 カ月~16歳 1 カ月(中央値 7 歳)であった.治療前後に心エコー図を実施し,心拍数(HR),左冠動脈前下行枝血流速度(LAD;max,mean),心係数(CI),左室拡張末期容積(LVEDV),左室駆出率(LVEF),左室心筋重量(MAS)を計測,比較検討した.心エコー図装置はGE横河メディカル社製Vivid-iを用いた.なお身長・体重からBSAとLVEDV予測値,MAS予測値を算出.それぞれ% normal値を求めた.【結果】治療前LAD(max)36.4±17.0cm/sec,LAD(mean)26.3±13.1cm/sec,を心筋重量補正したものLAD血流速度(max補正)0.69±0.77cm/sec/g,同(mean補正)0.51±0.56cm/sec/g,はいずれもLVEDV〔(17.2~225.9)98.25±63.25ml〕と負の相関を示した〔LAD(max)補正 = 114.58×LVEDV - 1.2878(R2 = 0.9608)〕,〔LAD(mean)補正 = 212.9×LVEDV - 1.4929(R2 = 0.935)〕.一方,治療前CI(2.69~18.0)8.29±5.32l/min/BSAは後LVEF(39.5~82.8)65.64±14.31%と負の相関を示した〔後LVEF = -2.1779×前CI + 83.703(r = -0.806)〕.また,LVEDVを予測値で補正した前LVEDV% of normal〔45.9~302.4,(163.1±80.2)% of normal〕も後LVEFと負の相関を示した〔後LVEF = -0.0965×前LVEDV % normal,R2 = -0.2663〕.【考案】今回の検討の結果,LVEDVが大きいほど心筋重量当たりの冠動脈血流は減少することが明らかであった.一方,LVEDVが大きいほど治療後の左室収縮能が悪いことも明らかであった.【結論】PDAによる左室容量負荷が大きいほど心筋重量当たりの冠血流量が減少し心筋障害を生じる可能性がある.

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