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新生児期にNO吸入を必要とした完全大血管転位症,心室中隔欠損,肺動脈狭窄(TGA 3 型)の 1 例
社会保険中京病院小児循環器科1),心臓血管外科2)
西川 浩1),松島 正氣1),大橋 直樹1),久保田 勤也1),櫻井 一2),水谷 真一2),加藤 紀之2),森脇 博夫2),杉浦 純也2),波多野 友紀2)

【はじめに】肺動脈狭窄を伴わない完全大血管転位症(TGA)において新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)の合併例の報告はあり,この循環動態の管理にはしばしば難渋する.一方で肺血流減少性心疾患におけるPPHN合併の報告は少ない.今回,われわれは肺動脈狭窄を伴うTGA,VSD(TGA 3 型)で,新生児期にBTシャント後にNO吸入を必要とした症例を経験したので報告する.【症例】在胎37週,出生体重2,528g,筋腫合併のため予定帝王切開で出生.生下時チアノーゼのため気管内挿管,酸素吸入を行い近医新生児科に搬送.ここでTGA,VSD,PSと診断し,抜管,酸素中止,PGE1使用して当院へ搬送入院.心エコー診断;TGA,VSD 8mm,ASD 7mm,形態上valvularPS 2.6m/s,PDA(‐).SpO2 60%台に関して,呼吸,帝王切開,生理的肺高血圧を要因と考え酸素吸入開始.SpO2 70%台までを推移した.日齢 2 には人工呼吸器管理,100%酸素使用でもSpO2 50%台を示すようになりBTシャントを計画.緊急BAS施行するもSaO2 61%と改善得られず.PA index129(rt 4.1mm,lt 3.4mm).【手術】部分体外循環下に体重2.5kgに対して3.5mm GoreTexを用いてrt. modified BTを建てた.しかし,補助循環を停止するとSpO2が低下するため,NO吸入を行ったところ速やかにSpO2が上昇した.【術後経過】NO使用下にFiO2 0.21に下げることは可能だったが,NO吸入を停止するとSpO2が低下したため術後 6 日目までNO吸入を要した.以後は高肺血流への移行なく経過した.【結語】肺血流減少性心疾患であるTGA 3 型においてBTシャント術後も酸素化が得られずNO使用が著効した症例を経験した.

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