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先天性心疾患の診療における心臓バイオマーカーの有用性
旭川医科大学小児科
杉本 昌也,真鍋 博美,梶野 浩樹,藤枝 憲二

【背景】ANPやBNPは心血行動態を評価するバイオマーカーとして広く用いられている.近年,NTproBNPは心不全の検出に有用とされている.またtenascin Cは心筋リモデリングを反映するといわれている新たなバイオマーカーであるが,小児での検討の報告は少ない.【目的】われわれは先天性心疾患の病態評価におけるBNP,NTproBNP,tenascin C測定の有用性を検討した.【対象と方法】心臓カテーテル検査を目的に入院したうちの112名を対象とした.年齢は 6 カ月から18歳まで中央値は6.4歳.対象を(1)症状から分類した心不全の程度,(2)血行動態〔(a)左室容量負荷,(b)左室圧負荷,(c)右室容量負荷,(d)右室圧負荷〕で分類し,さらに川崎病など血行動態が正常な者をコントロール群とし,バイオマーカーとの相互関係を検討した.血中のBNPをCLEIA法(SRL),NTproBNPをECLIA法(Roche),血清tenascin CをCLEIA法(IBL)により測定した.【結果】(1)心不全の程度:心不全のある群は,その重症度に伴いBNP,NTproBNP,tenascin Cいずれもコントロール群に比べ有意に高値であった(p < 0.01).(2)血行動態:BNPは各群間に有意差は認めなかったが,NTproBNPは右室圧負荷群で,tenascin Cは右室圧負荷群のほかに,左室および右室容量負荷群で有意に高値であった(p < 0.05).【結論】NTproBNP,tenascin Cはいずれも心不全や右室圧負荷で上昇する.tenascin Cはさらに心室容量負荷を反映する.これらのバイオマーカーの測定は患者の病態の変化を鋭敏にとらえる可能性があり,種々のマーカーを組み合わせて総合的に判断することが重要である.

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