P-196
人工呼吸管理を要する乳児心疾患に対するβ遮断薬持続静注療法
国立循環器病センター小児循環器診療部
鳥越 司,北野 正尚,黒嵜 健一,石原 温子,山本 雅樹,宮崎 文,杉山 央,山田 修

【背景・目的】乳児でもβ遮断薬は不整脈,高血圧,無酸素発作,慢性心不全の治療法として確立されている.しかし深鎮静・人工呼吸管理が必要な例では経口投与が困難な場合がある.このような症例に対し当院ではβ遮断薬持続静注を行ってきた.今回,その効果・安全性に関して検討した.【方法】プロプラノロール持続静注を施行した 6 症例〔拡張型心筋症(DCM)2 例,拡張相肥大型心筋症(dHCM)1 例,頻脈誘発性心筋症合併の多源性心房性頻拍(MAT)1 例,重症肺動脈弁狭窄(cPS)と肺動脈閉鎖(PA with IVS)のバルーン弁形成術後各 1 例ずつ〕において持続静注の投与法,有効性,安全性について検討した.【結果】投与法(初期量/増加量/維持量mg/kg/day):DCM,dHCM例(0.01/1日ごとに0.01/0.5~1);cPS,PA with IVS例(0.05/12時間ごとに0.05/0.5~1);MAT(0.05/頻脈時に0.05ずつ増量/0.75).効果:DCM,dHCM例は体循環維持に深鎮静・人工呼吸管理が必要なほど左心機能が低下.β遮断薬を極少々から開始,漸増することで,導入に成功.人工呼吸から離脱しても頻脈にはなり難く,循環は安定;MAT例は静注投与では投与前に頻脈発作を生じたため 1 日量を持続静注に変更し,投薬時間による効果の変動を抑制し得た;cPS,PA with IVS例はPTPV後に重度漏斗部狭窄を合併し,暫時動脈管開存が必要.肺動脈順行性血流が十分となった(右室コンプライアンスの低下)2 週間後にプロスタグランジンE1を終了できた(酸素投下SpO2 80%以上).安全性:全例とも低血圧,気管支収縮,低血糖等の副作用は認めなかった.【結論】β遮断薬の持続静注は安定した効果が得られ,副作用に注意し漸増することで安全に投与可能である.特に循環動態が不安定で内服困難な患児に対しては極めて有用な投与法と判断される.

閉じる