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β遮断薬導入困難例に対して超少量導入が著効した小児慢性心不全 3 症例
国立循環器病センター小児循環器診療部
脇坂 裕子,津田 悦子,山田 修

心不全に対してカルベジロール(Car)は通常0.01~0.02mg/kg/dayで導入されるが,重症例では,導入困難な場合がある.超少量(0.002~0.004mg/kg)にて再導入を施行した 3 例を報告する.【症例 1】2 歳女児.7 カ月時,左冠状動脈肺動脈起始,僧帽弁閉鎖不全のため,左冠動脈‐大動脈吻合術,僧帽弁形成術および左冠動脈‐肺動脈シャント残存修復術を施行.ミルリノン(MIL)持続静注のうえ,Carを初期量0.01mg/kg/dayより導入するが,心不全の増悪がみられた.CTR 70%,BNP 617pg/mlで,Carを0.003mg/kg/dayより再導入した.Car 0.01mg/kg/day,CTR 63%,BNP 171pg/mlで退院し,現在Car 0.036mg/kg,CTR 49%,BNP 48pg/mlまで改善した.【症例 2】12歳女児.8 歳時,拡張型心筋症による急性左心不全で入院.ACE阻害剤を導入しいったん退院したが,1 年後に心不全増悪のため再入院.LVEF 15%であった.MIL併用のうえ,BNPが1,000台に下がった時点でCarを導入したが,心不全増悪と心室頻拍があり,導入困難であった.アミオダロンを導入後BNP 468pg/mlで,Carを0.004mg/kg/dayで再導入した.Car 0.08mg/kg/dayで,BNP 15pg/ml,LVEF 31%まで改善した.【症例 3】4 歳男児.4 カ月時に川崎病に罹患し,両側冠動脈瘤がみられた.1 歳10カ月時に急性心筋梗塞を発症.冠動脈バイパス術(左内胸動脈左前下行枝吻合術)を施行.LVEF 25%であった.MIL持続静注併用のうえ,BNP 409pg/mlで,Carを0.002mg/kg/dayより再導入し,Car 0.005mg/kg,BNP 257pg/mlで退院し,現在Car 0.11mg/kg/day,BNP 28pg/ml,LVEF 51%まで改善した.【結語】β遮断薬導入困難な小児慢性心不全症例に対し,BNPガイド下にβ遮断薬を超少量より開始することでβ遮断薬導入可能となり,少量の段階でもLVEFの改善はみられた.

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