P-199
多発性心室中隔欠損を伴う両大血管右室起始術後の肺高血圧・重症右心不全に対してsildenafilが著効を示した 1 例
兵庫県立こども病院循環器科
城戸 佐知子,田中 敏克,寺野 和宏,藤田 秀樹,齋木 宏文

【背景】先天性心疾患術後の肺高血圧および重症右心不全に対する治療には,手術介入で改善する部分が残されていない場合には限界があり,生命予後を著しく厳しいものとする.今回われわれは両大血管右室起始の術後,肺高血圧が悪化し慢性心不全急性増悪で入院後,sildenafilにより全身状態が改善した症例を経験したので報告する.【症例】両大血管右室起始,多発性心室中隔欠損,肺動脈弁下狭窄の14歳女性.両側Blalock-Taussig shunt手術後,6 歳10カ月時に根治手術を施行.術後 1 年目のカテーテル検査ではPp/Ps = 0.53,PARI = 9 単位と高値(beraprost開始),右室駆出率18%と低下していたが,BNP = 32.6pg/ml程度であった.その後左室収縮率も低下し,ACE阻害剤を開始.日常生活では登校は可能で長時間歩くと疲労を訴える程度であった.術後 5 年でBNP = 211と上昇,心エコー上の推定肺動脈圧は50から80mmHgへと悪化したため,在宅酸素,denopamineを導入したが改善なく,術後 6 年目にbosentan開始.その後心室性期外収縮多発,両心室収縮能低下,BNP = 500台となり,βblockerを試みる.心室性期外収縮は減少し,一時的にBNP = 200台に低下するがすぐに1,000台に急上昇し,歩行困難のため車椅子を使うようになった.術後 7 年目には 2 度,心不全の急性増悪で救急搬送された.術後 7 年半でsildenafilを導入(25mg×3 回/日)後,夜間睡眠が十分に取れるようになり,歩行も楽になった.心エコー上は明らかに左房径が改善,左室収縮率も0.15程度から0.25へ上昇,推定肺動脈圧は50mmHg程度,4 カ月後にはBNP = 311まで低下した.【考案】sildenafilには肺高血圧への有効性と同時に心不全への効果も確認されており,肺高血圧を伴う右心不全の場合,先天性心疾患術後症例でも効果が得られる可能性が示唆された.しかし,長期使用に耐え得るか,投与量,併用薬剤との問題などがあり,今後の使用例の検討が必要と思われた.

閉じる