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塩酸ランジオロール(オノアクト)を使用した 3 例
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科
岩本 洋一,先崎 秀明,岡田 尚子,増谷 聡,石戸 博隆,松永 保,竹田 津未生,小林 俊樹

【背景・目的】β遮断薬は頻脈性不整脈・心不全の治療に使われ,循環器領域において多くの効果が認められている.内服不能の小児においては静注薬が必要であるが副作用も多い.短時間作用型のものが開発されたものの小児の使用報告はほとんどない.今回,当院にて短時間作用型β遮断薬である塩酸ランジオロールを投与した小児 3 例について報告する.【症例 1】日齢13の男児.完全大血管転位にて日齢 6 にJatene手術が行われた.術後 7 日目に発作性上室性頻拍(PSVT)が出現した.同日よりジゴキシンと併用してランジオロール0.01mg/kg/minの投与が開始された.その後,PSVTの出現はみられなかった.投与開始後約12時間から心房性期外収縮(PAC)が出現したため,ランジオロールを0.02mg/kg/minまで増量したがPACは消失せず無効と判断され投与後22時間で中止となった.経過中に著明な血圧の低下,尿量の低下,徐脈は認められなかった.【症例 2】生後 5 カ月の女児.僧帽弁閉鎖不全に対し僧帽弁形成術が行われた.術後10日目にPACの 2 段脈が出現した.ジゴキシンと併用してランジオロール0.004mg/kg/minの投与が開始された.その後,PACは消失した.投与後 6 日目に再手術のため中止となった.投与中血圧の低下や心拍数の低下は認められなかった.【症例 3】日齢26の男児.三尖弁閉鎖・大動脈縮窄・大動脈弁下部狭窄にてβ遮断薬の内服が行われていた.日齢26よりランジオロール0.01mg/kg/minの投与が開始された.投与中に収縮期血圧が15mmHg低下したため,中止となった.1 時間後に血圧は回復した.経過中に心拍数の低下や低血糖は認められなかった.【考察】小児心疾患患者にランジロオールの投与が有用である可能性を示した.有害事象の発現には中止により速やかに改善し,安全に使用できる可能性も示唆された.

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