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弁逆流を伴うフォンタン術後患者に対するアンジオテンシン I 変換酵素阻害剤(ACE I)の長期効果
東京女子医科大学循環器小児科
岸 勘太,森 善樹,山村 英司,篠原 徳子,富松 宏文,中西 敏雄

【背景】弁逆流を伴う小児ではアンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE I)の長期投与の良好な効果が報告されている.しかしフォンタン術後患者においては運動耐容能には効果がなく,またACE Iの 6 カ月以内の投与では心室機能の改善効果がなかったと報告されている.しかし,6 カ月以上の長期投与で,弁逆流を伴うフォンタン術後患者での効果は不明である.【目的】房室弁もしくは大動脈弁逆流を伴うフォンタン術後患者でのACE Iの長期投与での心室機能への効果を検討すること.【方法】当院でフォンタン型手術を施行し,I 度以上の房室弁もしくは大動脈弁の逆流を伴い,心臓カテーテル検査を 2 回以上施行し,1 年以上ACE I を内服した症例(n = 7)を対象とし,フォローアップ前後(pre/post)での心臓カテーテル検査の結果を比較した.【結果】フォンタン術後 1 回目の心臓カテーテル検査時の年齢は,中央値:4 歳(2.1~5.9歳)で,術後からの期間は中央値:1.1年(0.1~2.0年)であった.フォローアップ期間は中央値:3.7年(1.8~6.0年)であった.主心室の拡張末期容積が137.4±67.3%Nから83.4±7.6%Nへと有意に減少した(p < 0.05).主心室の駆出率が47.4±10.7%から56.9±7.5%へと有意に上昇した(p < 0.01).拡張末期圧(7.0±3.7 vs 6.6±1.5mmHg pre vs post)・心係数(3.1±1.0 vs 2.9±0.9l/min/m2 pre vs post)はフォローアップ前後で有意な変化がなかった.【結論】ACE I の長期投与はフォンタン術後の患者においても,弁逆流による心室機能の悪化を防止する可能性がある.

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