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片肺全摘術後にTCPC術を施行した両大血管右室起始症の 1 例
横浜市立大学附属病院小児循環器科1),心臓血管外科2),長野県立こども病院循環器科3),東京都立清瀬小児病院心臓血管外科4)
志水 直1),山口 和子1),渡辺 重朗1),西澤 崇1),岩本 眞理1),町田 大輔2),磯松 幸尚2),益田 宗孝2),瀧聞 浄宏3),寺田 正次4)

今回われわれは,肺静脈閉塞後に感染を反復した片肺摘出術後に,残存片肺へのTCPC術を施行した 1 例の術後 1 年までの経過を報告する.症例は 3 歳男児.両大血管右室起始症(D-transposition type),心室中隔欠損症の診断で,生後 3 カ月時に肺動脈絞扼術を施行した.生後 6 カ月時より左肺静脈狭窄を認め,経皮的バルーン拡大術,左肺静脈狭窄解除術を施行したが,1 歳 2 カ月時に左肺静脈完全閉塞と左肺動脈順行性血流の消失を確認した.肺動脈弁下高度狭窄を認め,心室中隔欠損孔は大きくパッチ閉鎖困難であり,1 歳 4 カ月時に両方向性グレン手術を施行した.血行動態的には右肺循環のみのグレン手術となった.その後左肺野肺炎,抗菌薬抵抗性の膿胸を反復したため,2 歳 8 カ月時に左肺全摘術を施行した.左肺全摘術前の心臓カテーテル検査では右肺動脈圧は13mmHg,肺血管抵抗(右)2.9であったのに対し,術後には右肺動脈圧が 8mmHg,肺血管抵抗2.5となり,摘出前後で肺高血圧の軽度改善を認めた.以上の結果よりTCPC術は可能であると判断し,3 歳時に片肺TCPC術を施行した.術後は乳び胸を発症した以外に大きなトラブルはなく,現在はNYHA 2 度程度で外来通院中である.術後 1 年の心臓カテーテル検査で右肺動脈圧15mmHg,肺血管抵抗3.8と肺高血圧を認めたため,強心薬と血管拡張薬を増量し今後も注意深く観察していく.両心室修復が困難と考えられる先天性心疾患に片側肺静脈閉塞を合併した場合はその後の治療に難渋するが,片肺摘出術後に残存片肺へのTCPC術を施行する方法はその治療選択の一つと考えられる.

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