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年長患児に両方向性グレン手術を施行した場合の動脈血酸素飽和度について
榊原記念病院小児科1),心臓血管外科2)
渡部 珠生1),朴 仁三1),西山 光則1),嘉川 忠博1),佐藤 潤一郎1),石橋 奈保子1),内藤 幸恵1),西口 康介1),木村 正人1),村上 保夫1),高橋 幸宏2)

【背景】年長児に両方向性グレン手術(以下BDG)を施行した場合,術後に低酸素血症の増悪をしばしば経験する.【目的】年長児にBDG手術を施行した場合の,酸素飽和度の規定因子を明らかにすること.【対象】2004年 1 月以降に当院で年長児(学童以降)になってBDG手術を施行した22例(男10例,女12例).【結果】原疾患は右室性単心室 9 例,両大血管右室起始 5 例,三尖弁閉鎖,左室性単心室各 2 例,ほか 4 例であった.BDG手術時年齢は17.2±9.5歳(中央値16.4歳),BDG手術前の動脈血酸素飽和度(以下SaO2)は平均83.4±5.2%,BDG手術後のSaO2は82.8±6.8%であった.BDG手術後のSaO2は,術前の肺血管抵抗(0.76~3.56U・m2,平均1.86U・m2)と高い負の相関(-0.78)を示し,術前の静脈血酸素飽和度,心係数とは中程度の正の相関(0.48~0.63),手術時の身長,体重,体表面積,年齢とは中程度の負の相関(-0.42~-0.51)を示した.BDG術前・術後の体心室の駆出率,術前のPA index,術後の平均肺動脈圧とは相関関係を認めなかった.BDG手術時に22例中18例で,肺動脈へ上大静脈以外から血流を供給のある(以下add.flow)血行動態を選択し,その内訳は肺動脈絞扼術後(以下PAB)8 例,元からの肺動脈狭窄(以下PS)6 例,以前からの体肺動脈短絡手術をそのまま利用したもの(以下shunt)が 4 例であった.PS群のSaO2(平均80.0%)はPAB群(平均87.5%),shunt群(平均86.3%)に比し低値であった(p < 0.05).22例中上大静脈または片側肺動脈の血栓性閉塞を 4 例で認め,このうち 3 例はadd. flowのない血行動態であった.臥床安静時に比し,歩行程度の運動でSaO2が著明に低下する例ではQOLの低下を認め,これらのうち 3 例ではBDG術後早期にTCPCを施行していた.現在までに 7 例でTCPC手術が終了(1 例待機中)し,22例全員生存している.【まとめ】年長児にBDGを施行した場合,体格が大きくなるほど,術前の肺血管抵抗が高いほど,BDG術後のSaO2が低値となる.

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