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漏斗胸を合併したFontan candidateに対するTCPC・Nuss同時手術の経験
群馬県立小児医療センター循環器科1),群馬大学医学系研究科小児生体防御学2),済生会前橋病院小児循環器科3)
池田 健太郎1),小林 徹1,2),関 満2),下山伸哉3),鈴木尊裕3),小林富男1)

【はじめに】TCPC法を用いたFontan循環の成立には,適正な肺動脈の成長や肺血管抵抗,conduitのルート確保などが重要である.われわれは今回,漏斗胸を合併したFontan candidateにTCPC手術を行う際conduitの圧迫が懸念されたため,TCPC手術と同時にNuss法を用いた胸郭形成術を同時に行い,良好な経過を得たので報告する.【症例】現在10歳女児.単心房,単心室,肺動脈弁狭窄,右胸心,単一冠動脈,両側上大静脈,無脾症候群.1 歳10カ月時に両側Glenn手術施行し,4 歳時にTCPC手術を予定した.胸郭の陥凹度の指標であるCT funnel index(FI)は5.3(正常値 < 3.5)と胸郭の著明な陥凹を認め,漏斗胸によるconduitの圧迫や肺血流不均衡による血流障害が懸念された.そのため,TCPCと同時にNuss手術を行うこととした.胸骨正中切開下に18mm ePTFE graftを用いて下大静脈‐主肺動脈バイパスを作成,閉胸前にpectus barを挿入し胸骨挙上を行った.術後の心臓カテーテル検査では,IVC圧13mmHg,LPA圧12mmHg,RPA圧12mmHgとconduit部の狭窄は認めなかった.10歳時に合併症なくbar抜去を施行.現在全身状態は良好であり,FI = 2.1と漏斗胸の著明な改善を認めた.【考察】単心室症例に漏斗胸を合併する場合,TCPC術時にNuss手術を併用することにより,conduitの圧迫予防や左右肺血流のバランスを保ち血行動態の改善が図れる可能性が示唆された.

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