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ヘパリン療法が有効と考えられたTCPC術後の蛋白漏出性胃腸症(PLE)の 1 例
鳥取大学医学部周産期小児医学1),岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児科2),心臓血管外科3)
船田 裕昭1),坂田 晋史1),倉信 裕樹1),美野 陽一1),橋田 祐一郎1),辻 靖博1),神崎 晋1),大月 審一2),佐野 俊二3)

【はじめに】Fontan術後 1 年 3 カ月で発症したPLEに対し,外科治療後にヘパリン療法を行い,効果を認めたので報告する.【症例】3 歳女児,HLHS(MA,AA).日齢 3 にmodified-Norwood手術を施行.さらに生後 6 カ月時にBDG + ASD creation,1 歳 9 カ月時にTCPC(lateral tunnel)を施行した.3 歳 0 カ月ごろより体重増加と浮腫の増強,低アルブミン(Alb)血症が出現,Tc-99m蛋白漏出シンチよりPLEと診断した.心臓カテーテルでCVP 17mmHgと上昇,左肺動脈狭窄を認めたためバルーン拡大術,次いでステント留置を行ったが改善はなかった.3 歳 2 カ月時にfenestrated TCPC(extracardiac conduit)再建術を施行したが術後も低Alb血症が持続.術後77日目よりヘパリン投与(5,000U/m2×2/day)を開始.また術後の心臓カテーテルでCVP 12mmHgと低下したがさらなるCVP減圧を目的に術後98日目よりbosentan内服(15mg/kg/day)を併用した.ヘパリン投与開始後,2.5g/kg/dayで連日投与していたAlbの漸減,中止が可能となった.術後98日目よりヘパリンを5,000U/m2×1/dayに減量,経過中に感染による喘息様気管炎に伴い再燃を認めたが,ヘパリン増量と喘息様気管支炎に対する一時的なステロイド投与で改善した.術後295日目にヘパリン投与を中止.現在はAlb補充なく,bosentan内服継続で通院中であるが血清Albは正常値を維持している.【考察】Fontan術後に発症したPLEにヘパリン療法を行い,効果を認めた.PLEでは外科治療が第一選択とされることが多いが,外科治療の無効例に対するヘパリン療法の効果が示された症例は少なく,今後のPLE治療の一助になると考えられる.

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