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TCPC術 3 年後にplastic bronchitisを併発したHLHSの1男児例
鳥取大学医学部周産期小児医学1),倉敷中央病院小児科2),岡山大学大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科3)
橋田 祐一郎1),辻 靖博1),坂田 晋史1),倉信 裕樹1),美野 陽一1),船田 裕昭1),神崎 晋1),脇 研自2),新垣 義夫2),佐野 俊二3)

【はじめに】plastic bronchitisは,気管支鋳型粘液栓を喀出し気道閉塞のため致死的な経過をとるまれな疾患で,先天性心疾患への合併はFontan術後のものが多く,現在のところ確立された治療法がないため予後不良の合併症とされている.今回われわれは,TCPC術 3 年後に発症し,以後再発を繰り返し治療に難渋している症例を経験したので報告する.【症例】HLHSの 6 歳男児.日齢 7:mod-Norwood(RV-PA),6 カ月時:bil-Glenn,2 歳 5 カ月時:fenestrated TCPC(lateral tunnel)施行.6 歳 2 カ月時,突然の呼吸困難にて入院.この時,樹枝状の粘液栓(cast)を喀出し診断に至った.病理では,フィブリン成分が主体で好酸球を含む炎症細胞の浸潤と一部ムチン成分を伴っていた.cast喀出後は呼吸状態著明に改善し,以後は病理所見も踏まえてステロイド内服・吸入にて加療.ステロイド内服は 3 カ月間で漸減終了としたが,その後すぐに 2 度の再発を来したため少量で維持.しかし,3 カ月後に再びcastによる気道閉塞を来し人工呼吸管理を 4 日間要した.挿管時にcast喀出し,その後は呼吸状態の改善を認めた.気管支鏡では,右気管支にcastの残存を認め,摘出を試みたがcastが脆く困難であった.現在はステロイドと抗凝固療法としてヘパリンを併用して経過をみている.また,経過中の心カテにてCVP(13mmHg)の上昇はないものの左肺動脈の狭窄を認め,肺血流シンチでも右肺:左肺 = 8:2 と左右差を認めているため,右肺血流増加に伴うcast形成も考慮され,左肺動脈狭窄への治療介入も模索しているところである.

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