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総肺静脈還流異常術後遠隔期の不整脈の検討
茨城県立こども病院小児科1),心臓血管外科2)
塩野 淳子1),菊地 斉1),村上 卓1),坂有 希子2),五味 聖吾2),阿部 正一2)

【はじめに】総肺静脈還流異常(TAPVC)術後には,調律異常を合併しやすいことが知られている.術後遠隔期の不整脈について検討する.【対象と方法】当院で経過観察しているTAPVC術後患者23例(当院以外での手術例も含む.心房内臓錯位症候群は除外).Darling分類では,IA型 8 例,IIB型 3 例,IIA型 3 例,III型 7 例,IV型 2 例であった.術式と予後,経過観察中の12誘導心電図所見(心拍数,接合部調律の有無)について,後方視的に検討した.【結果】経過観察期間は 4 カ月~19年 6 カ月(中央値 4 年)であった.術式はposterior approachが12例,van Praagh法,cutback法,anterior approachが各 2 例,right lateral approach,Vargus法が各 1 例であった.PVOが進行したものが 7 例あり,うち 3 例が死亡した.年齢に不相応な徐脈が認められたのは 2 例で,いずれも調律は接合部調律であり,のちに洞機能不全と診断した.この 2 例の術式は,それぞれright lateral approach,Vargus法であった.その他の症例で,期間中の12誘導心電図で接合部調律の認められたものはなかった.洞性不整脈の目立つものが 1 例あったが,ホルター心電図などで洞機能不全は否定的であった.洞機能不全以外の治療を要する不整脈として,PACが 2 例あったが,いずれも経過中に軽快した.不整脈の認められた症例でPVOの症例はなかった.【まとめ】従来の報告と比較して洞機能不全の発症は少なく,posterior approachの症例で洞機能不全を呈したものはなかった.TAPVC修復術では術式によっては洞結節周辺への侵襲が問題になり,術後洞機能不全が認められることがある.PVOがなく経過良好と思われる症例でも,不整脈に注意したフォローアップが必要である.

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