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心房中隔欠損における心電図V1~2誘導R’波高電位は右室容量・圧負荷を反映する
北海道立子ども総合医療・療育センター循環器科1),札幌医科大学小児科2)
高室 基樹1,2),長谷山 圭司2),畠山 欣也1),横澤 正人1),堀田 智仙2),阿部 なお美1)

【背景】心房中隔欠損(ASD)においてV1誘導のR’の高電位が右室負荷を示すことが知られている.【目的】ASDの右側胸部誘導R’電位と容量・圧負荷との関係を検討する.【方法】心臓カテーテル検査時にhANP,BNPを測定し得たASD 30例を対象に胸部誘導V1~V3までのRもしくはr波とR’波の比(R’/R)と,肺体血流比(Qp/Qs),平均肺動脈圧(mPAP),%右室拡張末期容積(%RVEDV),hANP,BNP値との相関を回帰分析した.また,R’/Rを高値群と低値群に分け,各パラメータについて有意差の有無をt検定した.いずれもp値 < 0.05を有意とした.【結果】対象年齢は 1~20(中央値 6)歳,男15例,女15例であった.各パラメータの平均値および標準偏差は,Qp/Qs 2.6±0.5,mPAP 17±7.5mmHg,%RVEDV 170±37%,hANP 51±48μg/ml,BNP 34±26μg/ml,R’/RはV1が3.8±2.2,V2が1.4±1.3,V3が0.5±1.0であった.V3はR’のみられない例が半数を超えたため検討から除外した.V1ではR’/Rと,%RVEDV(R2 = 0.78,p < 0.01)およびmPAP(R2 = 0.66,p < 0.01)が相関したがQp/Qs,hANPとは相関しなかった.散布図でV1のR’/Rが 5 以上と 5 未満で 2 つの群がみられたため,この 2 群に分けて検討するといずれもQp/Qsとp < 0.01で相関した.2 群間ではQp/Qs, hANPに有意差はなく,%RVEDVのみ有意に ≧ 5群で大きかった.V2ではR’/RはQp/Qs,mPAP,%RVEDV,hANPのいずれともp < 0.01で相関した.【考察】V1とV2のR’/Rは右室圧負荷を反映していた.一方,容量負荷(Qp/Qs, hANP)はV2がV1より多項目で反映しており,ASDの心電図で右室負荷を論じる場合V1に加えV2誘導にも着目すべきであると考えられた.

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