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乳児期の心室中隔欠損症における迅速BNP値ガイド下診療の有用性
宮崎大学医学部小児科
近藤 恭平,高木 純一,大塚 珠美,久保 尚美

【背景】脳性利尿ペプチド:B-type natriuretic peptide(以下BNP)はさまざまな心疾患において心不全の指標として有用である.しかし,年齢および病態により,BNP値の解釈に注意が必要といわれている.先天性心疾患のうちで最も頻度が高い,心室中隔欠損症(ventricular septal defect:以下VSD)では,左室容量負荷および右室圧負荷によるBNP値上昇が知られている.【目的】乳児期に心不全症状が存在し,手術適応と判断された症例について,術前後の迅速BNP値の推移,心臓カテーテル検査における各血行動態指標を検討する.【方法】微量検体で短時間に結果を得ることのできる迅速BNP測定系(化学発光酵素免疫測定法,パスファースト,三菱化学ヤトロン社)を用い,乳児期早期に心不全症状を呈し,根治手術を施行したVSDの 7 症例を検討した.【結果】術前迅速BNP値は28.3~2,000以上(平均:475)pg/ml,手術時期は生後 2~5(平均:2.8)カ月,術前心臓カテーテル検査におけるQp/Qsは2.36~4.26(平均:2.96),Pp/Psは0.17~1(平均:0.7),Rp/Rsは0.13~0.4(平均:0.26),PVRは0.5~7(平均:2.91)wood unit・m2であった.術前迅速BNP値とQp/Qsのみが正の相関関係(r = 0.88,p = 0.05)を認めた.また,術後の迅速BNP値のcut off値を20pg/ml未満と設定した場合に,術後 3 カ月前後で正常化する傾向が観察された.【考察】VSDの乳児において右室圧負荷より左室容量負荷自体がBNP分泌に大きく関与していることが類推された.また,迅速BNP値は術前の治療介入の時期を示唆するだけではなく,術後の投薬終了時期をも示唆し,乳児VSDを管理するうえで有用である.

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