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心臓原発の神経由来腫瘍の 1 例
東北大学医学部小児科1),心臓血管外科2)
新田 恩1),田澤 星一1),岩岡 亜理1),大野 忠行1),赤坂 純逸2),川本 俊輔2),崔 禎浩2)

原発性心臓腫瘍はまれな疾患である.小児において頻度の多い心臓腫瘍は,横紋筋腫,線維腫,粘液腫,奇形腫の順である.神経由来腫瘍は非常にまれであり,今回 1 例経験したので報告する.症例は,胎児期よりエコー検査とMRIにて前縦隔腫瘍と胎児水腫が指摘されていた.胎児水腫が進行したため,34週 0 日に緊急帝王切開にて2,722gで出生した.出生後のエコー検査にて,大動脈,肺動脈基部に入り込む腫瘍が認められた.心内奇形は認められなかった.NICUにて人工呼吸管理,心不全の治療を行った.出生後の胸部CTにて大血管を圧迫する径60×35×55mmの前縦隔腫瘍の診断に至り,腫瘍圧迫が原因の心不全と考え,また症状の改善も得られないため,日齢 4 に緊急腫瘍摘出術を施行した.しかし,手術中に腫瘍は心膜に包まれ右室流出路に癒着していることが判明し,心臓原発腫瘍と考えられた.腫瘍の全摘出は困難であり,一部残存したまま手術を終了した.術後,心不全は改善し日齢75に退院した.腫瘍の病理所見ではspindle cell tumorであった.免疫染色にて筋系マーカーであるdesmin,αSMA,myoD1,HHF35と血管系マーカーであるCD34はすべて陰性であること,神経系マーカーであるNSE,CD56と間葉系マーカーであるvimentinが陽性であり神経由来腫瘍と判断した.S-100が陰性であり確定診断にはいたっていないがschwannomaが最も疑わしい.以上の経過に,文献的考察を加えて報告する.

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