P-219
当科における胎児心エコー検査の現状—今後の普及に向けての課題
秋田大学医学部小児科
岡崎 三枝子,田村 真通,小山 田遵,島田 俊亮

【背景・目的】胎児心エコー検査法の発展により,多くの先天性心疾患が出生前診断可能となった.その一方で,胎児期に先天性心疾患や胎児不整脈疾患に全く注意が払われずに,出生後大きな問題を抱える症例も後を絶たない.このことは胎児心臓病診断の可能性や意義についての情報や啓蒙が不足していることに起因するのかもしれない.そこで今回われわれは,自施設における胎児心エコー検査の実施状況を調査分析することで,今後の普及に必要な傾向と対策へのヒントが得られるのではないかと考えた.【方法】2005年 1 月から2007年 8 月までに胎児心エコー検査を受けた症例について,外来および入院診療記録から主に次の点を調査した.(1)胎児心エコー検査依頼の理由,(2)秋田大学小児科への紹介経路.【結果】胎児心エコー検査は2005年24例43件,2006年47例99件,2007年28例64件に施行され,それぞれ 8,4,7 例に先天性心疾患を認めた.胎児心エコー検査依頼理由に関してはこの99例中87例で調査したところ,胎児要因が65例と最多であった.その内訳では先天性心疾患疑い16,不整脈12,羊水量異常12,胎児水腫 8,胎児発育遅延 5,臍帯・臍帯血流異常 6,消化管奇形 4,その他 2 であった.それ以外では母胎要因により12例,その他の要因で10例が紹介されていた.次に当科紹介に至った経路を検討したところ,他院産科から当院産科を経たものが33例と最も多く,ついで開業産科から当院産科22例,当院産科から15例,開業産科から他院産科を経て当院産科に至り紹介されたものが10例であった.当科紹介に至る前に小児科医がかかわった症例はわずか 3 例にすぎなかった.【結語】当科における胎児心エコー検査のほとんどが産科医からの紹介で成り立っている一方で,その多くは心臓病を否定することを目的としている現状が明らかとなった.胎児心臓病のスクリーニング法に関する啓蒙を産科医だけでなく一般小児科医に対しても行う必要があると考えられた.

閉じる